2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボトルネック中の粉体輸送と熱雑音が誘起する亜臨界破壊に関する計算統計物理学的研究
Project/Area Number |
11J02102
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 統計物理学 / 非平衡現象 / 粉体 / 輸送現象 / 蠕動運動 / 破壊 / 緩和現象 / べき分布 |
Research Abstract |
本研究では、統計物運学の立場から生物学や工学、地球物理学というた分野における非平衡現象のメカニズムを明らかにすることを大きな目標として掲げている。特に,(1)ボトルネック中の粉体輸送と(2)熱雑音が誘起する亜臨界破壊について研究を行う。 ボトルネック中の粉体輸送の研究としては、本年度な壁の蠕動運動による粉体の輸送特性を調べた。その結果、ボトルネックの幅を制御することで、粒子のボトルネックでの詰まりによる相転移が存在することをシミュレーションにより明らかにした.この転移により、非効率な輸送(unjammed flow)と効率の良い輸送(jammed flow)が特徴づけられる。この相転移現象を精査した結果を論文にまとめ、Physical Review Eに出版した。また、本年度はシミュレーションコードの高速化も行った。これは、研究計画にあるような、より複雑な状況のシミュレーションを可能にするためである。 亜臨界破壊の研究としては、熱活性ファイバーバンドル模型と呼ばれるモデルを用い、微小亀裂の発生間隔(待ち時間)の特性を調べた。その結果、温度と外部応力を制御することで、「最初減速したのち急激に加速する破壊プロセス」と「加速するのみの破壊プロセス」という2つの相が存在することをシミュレーションと平均場近似の解析により明らかにした。ここで、相図そのものは平均場近似をしようとしまいと変わらないが、前者の相について、減速から加速に移り変わるまでの時刻が大きく変わることを見出した。これは、平均場近似をしない系では破壊の結果として応力集中が起こるためであることを、切断したファイバーの構造解析により明らかにした。また、待ち時間の分布がべき分布となることも明らかにし、これらの結果を論文としてまとめ、Europhysics Lettersに出版した。一方、強度の乱れがある場合についてもシミュレーションを行い、乱れのない時との振る舞いの違いを調べた。なお、本研究のために8月1日から12月17日まで、ハンガリー、デブレツェン大学の共同研究者を訪問した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粉体の輸送については、計面していた「外力による蠕動の制御」や「濡れた粉体の輸送」までは達成できなかったものの、そのためのシミュレーションコードの高速化、ならびに、より単純な状況において精査した結果を論文として出版することはできた。破壊については、研究成果を論文として出版できたほか、計画していた「強度の乱れ」がある場合について一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二つの研究テーマを並行して進めているが、相対的には粉体輸送の研究が計画よりやや遅れている。この理由の一つとしては、平成23年度は約半年間ハンガリー、デブレツェン大学を訪問するなど、相対的に破壊の研究に注力していたためである。そこで、平成24年度はデブレツェン大学への訪問期間を減らすなどし、より粉体輸送の研究に力を入れるようにする。また、日本学術振興会の二国間共同研究のサポートにより、破壊の研究の共同研究者が10月にしばらく来日することが決まっており、研究代表者の訪問期間を減らしても破壊の研究のエフォートが大きく減ることは無いと考えられる。そのため、破壊の研究も十分に遂行できるであろう。
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