2012 Fiscal Year Annual Research Report
ボトルネック中の粉体輸送と熱雑音が誘起する亜臨界破壊に関する計算統計物理学的研究
Project/Area Number |
11J02102
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 統計物理学 / 非平衡現象 / 粉体 / 輸送現象 / 蠕動運動 / 破壊 / 緩和現象 / べき分布 |
Research Abstract |
本研究では、統計物理学の立場から生物学や工学、地球物理学といった分野における非平衡現象のメカニズムを明らかにすることを大きな目標として掲げている。特に、(1)ボトルネック中の粉体輸送と(2)熱雑音が誘起する亜臨界破壊について研究を行う。 ボトルネック中の粉体輸送の研究としては、本年度は蠕動運動をする管の内部における乾いた粉体の輸送特性を調べた。前年度からの主な変更点としては、蠕動運動のメカニズムとして外力による制御を行ったこと、そして粉体間の相互作用に接線方向の摩擦力を導入したことが挙げられる。その結果、以前見られたjammed flowとunjammed flowの他に、粒子全体が一部に局在化することで流量が極端に低くなる流れを見出した。また、流量が一部で負となる流れが生じること、特に、外力が小さいときには系全体の流量が負になりえることを見出した。本結果は3月の日本物理学会大会で報告した。 亜臨界破壊については、熱活性ファイバーバンドル模型と呼ばれるモデルによる研究を行った。今年度は、前年度までとは異なるアルゴリズムを考案した点が新しい箇所である。従来の手法では、外部応力や温度を下げていくと、計算時間が指数関数的に増加していくことが分かっていた。これは、我々が以前発見した寿命の修正Arrhenius則と強く関係している。一方、我々がkinetic algorithmと呼んでいる手法を用いると、応力や温度を下げると、計算時間は一定値に収束していくことが分かった。現在、乱れた系において、この手法による寿命やバーストサイズの振る舞いの調査が大体済んできたところで、近いうちに結果を論文に纏め投稿できると期待している。なお、本研究のために1月6日から3月8日まで、ハンガリー、デブレツェン大学の共同研究者を訪問した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粉体の輸送については、計画していた「濡れた粉体の輸送」までは達成できなかったものの、「外力による蠕動制御」と「摩擦の導入」はシミュレーションの実装ができ、興味深い結果が得られている。この結果については、背後の物理的メカニズムさえ明らかになれば、論文投稿も可能だろう。破壊については、新たな計算手法により、乱れた系について多くの結果を得た。また、プロシーディングスが2報受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
二つの研究テーマを並行して進めており、研究進捗は若干蠕動輸送の方が破壊の研究より遅れているかとは思うものの、初年度と比べると進捗の差は大分狭まったと考えている。そこで、本年度も前年度と同様の研究計画をしようと考えている。本年度は最終年度であることを考慮し、破壊に関する共同研究のためのハンガリー訪問は、7月から9月の約3か月を考えており、6月までは蠕動輸送の研究に力を入れる。10月以降の研究に関するエフォートは主に蠕動輸送に費やそうと考えている。ただし、日程はまだ決まってはいないが、本年度後半に破壊の共同研究者が二国間共同研究により来日するはずなので、約1か月はエフォートを破壊の研究に回す予定である。
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