2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜ラフトシグナリングを変換するGPCR機構の解明:1分子追跡法による研究
Project/Area Number |
11J02162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角山 貴昭 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ラフトシグナリング / GPCR / 細胞膜骨格 |
Research Abstract |
本研究ではGPIアンカー受容体のシグナリング過程を1分子レベルで解析することを目的としている。 GPIアンカー型受容体は、膜貫通部分をもたないため、それ自身ではシグナルを細胞内に伝えることができない。今までは脂質相互作用による表裏カップリングや、その他の膜貫通タンパク質の共同などの説が提案されていたが、十分な証拠は得られていなかった。 本年度の研究によって、クラスター化したGPIアンカー型受容体にGPCR様分子であるCD47がリクルートされること、また信号の伝達にはCD47が必要であることが明らかとなった。驚くべきことに、1分子レベルの解析ではGPIアンカー型受容体とCD47の相互作用時間は100ms程度と、非常に短く、ダイナミックな過程であることが明らかとなった。このような結果は、1分子レベルでのリアルタイム観察によって初めて成し遂げられたものである。さらに、いままで全く関連性がないと考えられていたGPIアンカー型タンパク質のシグナルがGPCRを通して伝達されるという、新しい概念を創出することに成功した。 また、GPIアンカー型受容体は糖脂質やコレステロールが集合する、ラフトと呼ばれる特殊な脂質組成のドメインを形成することが知られている。このラフトがCD47のリクルートにどのように影響するのかを調べるため、CD47の膜貫通部分をラフト親和性の低いものに変換して観察したところ、野生型から相互作用がわずかに低下したのみであった。この結果は、ラフトシグナリングの過程の中でも、非ラフト的な相互作用が働いている可能性を示唆している。 GPIアンカー型受容体は拡散と一時的な停留を繰り返し、その一時停留のときのみシグナルが伝達されていることが今までの研究で明らかとなっている。また、この一時停留はアクチン細胞骨格への結合によってなされていることが示唆されている。上記のようにアクチン細胞骨格とクラスターの結合はシグナリングにおいて非常に重要な過程であり、本研究ではアクチンとGPIアンカー型タンパク質を繋ぐ分子としてインテグリンに着目した。 1分子レベルの解析によってインテグリンがGPIアンカー型受容体のクラスターにリクルートされること、そのリクルートはCD47の場合と同様に100ms程度と短寿命であることが明らかとなった。興味深いことに、インテグリンの共局在タイミングはクラスターの一時停留のタイミングと同時であり、インテグリンがリクルートされることによってGPIアンカー型受容体クラスターが一時的な停留を起こしている様子が観察された。この結果はインテグリンが信号分子をアクチン細胞膜骨格に繋ぎとめている現場をリアルタイムで観察した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果としてGPIアンカー型受容体のシグナルを伝達していると考えられる、CD47とインテグリンの1分子レベルでの解析が完了した。今までの研究では、低い空間分解能と時間分解能における解析しか行われなかったため、その実態は不明であった。本研究では、生細胞中での高分解能観察という手法を用いることによって初めて、そのダイナミックな過程が明らかとなった。これは当初の計画に従ったものであり、十分な成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに膜貫通タンパク質であるCD47とインテグリンの解析が終了した。 来年度以降はこれをさらに発展させ、内層の信号分子に注目して実験を進めていく。特にGPIアンカー型受容体クラスターを膜骨格に繋いでいる分子は特に重要である。現在、この分子としてfocal adhasion kinase(FAK)を候補として考えている。 FAKとGPIアンカー型受容体クラスターを同時に1分子レベルで可視化することにより、膜骨格に結合するプロセス、その時に行われているシグナル伝達の過程を直接観察することが可能となる。 その結果から、FAKがシグナリング分子のプラットフォームとして働き、シグナルを効率的に伝達しているというモデルを構築したい。
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Research Products
(1 results)