2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02182
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 匡志 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ブラックホール / 高次元時空 / 余剰次元 / 回転ブラックホール |
Research Abstract |
1.高次元時空における真空多体ブラックホール解の構成: ブラックホールが電荷を持つ場合には,重力とクーロン力が釣り合うことにより,多体のブラックホールを記述するアインシュタイン方程式の厳密解が存在することがこれまでに知られていたが,電荷を持たない場合については,重力と釣り合う力がないためそのような状況を記述する時空を構成することは困難であると考えられてきた.しかし,時空が高次元であり,なおかつ余剰次元方向がコンパクト化されている場合には,真空,つまりブラックホールが電荷を持たない状況においても,多体のブラックホール解を構成できることを我々は示した.また,なぜこのような状況がありえるのかについて,有効理論の立場から考察を行い,この解に対しより一般的な拡張も与えることにも成功した.2.高速回転ブラックホール周りにおける高速粒子衝突: 最近Banados,Silk,West(BSW)によって高速回転しているブラックホール周りにおいて非常に大きなエネルギーの粒子衝突(BSWメカニズム)が起きる可能性が示された.BSWによる解析においてはテスト粒子近似のもとで議論がなされているが,現実的にどの程度のエネルギースケールの粒子衝突が起きるかを知るためにはバックリアクション等の影響を考慮する必要がある.本研究では特に重力波の影響を考慮した場合のBSWメカニズムについて議論し,BSWメカニズムにおいては重力波の効果は必ずしも衝突のエネルギースケールを制限しないことを示した.時空が高次元である影響はまだ実験的に検証されていない高エネルギー領域において現れると期待され,このような高エネルギー粒子衝突について調べることは重要である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真空の多体ブラックホール解はコンパクトな余剰次元をもつ高次元時空における特徴的な現象であり厳密解を具体的に構成することはこのような時空中の強い重力現象を深く理解することに繋がっており評価できる.また磁場が存在している場合にも高速粒子衝突が起きうることが示されており,現実的な状況で粒子加速が可能であるかを知るための第一歩として評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
なぜ余剰次元のサイズが小さいのか,という問いに対する一つの答えは,時間発展とともに余剰次元のサイズが徐々に小さくなっているからである,というものがあり実際にそのような物理的状況を記述する簡単なモデルを我々は構成することができる.昔余剰次元のサイズが大きかった時期に余剰次元のサイズより小さなブラックホールが形成された場合,時間が経過し余剰次元のサイズが小さくなりやがてブラックホールのサイズと同程度になったときに何が起きるか,という問題がある.これは,直ちに観測と結びつくわけではないが,原理的な問題として,また余剰次元をもつ時空特有の現象であるため,我々が高次元時空をより深く理解することにつながるため,解決すべき問題である.私の先行研究によって,そのような性質をもつ時空を構成する方法はすでにわかっており,得られた時空を解析することで上の問いに対する一つの答えを得られると考えている.
|
Research Products
(7 results)