2011 Fiscal Year Annual Research Report
適応進化の副次的効果 : 種内多型の進化と高次の生態学的現象をつなぐ
Project/Area Number |
11J02212
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 佑磨 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 適応進化 / 個体群動態 / 群集構造 / アオモンイトトンボ / ハラスメント |
Research Abstract |
生物の適応進化は、種内の相互作用の改変、種間の相互作用の改変を介して高次の生態的現象に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、現在までに大きく2つのことを見出した。一つは、アオモンイトトンボの2型の間にはニッチの分化が生じていたことである。緑色の体色を呈するタイプの雌は、緑色の植物(生きた植物)を産卵資源として利用するのに対し、茶色の体色を呈するタイプの雌は、茶色の植物(枯れた植物)を産卵期質として利用している。これは、型間でニッチを分割させることで、雌個体群全体が利用できる資源量、資源幅を拡大していることを示唆している。もう一つは、雄から受けるハラスメントの分散である。1つの型の雌のみが存在する場合、雄のハラスメントはその雌に対して一極集中するのに対し、2つの型が共存する場合には、各オスはどちらかの型の雌のみを選択的に探索するために、ハラスメントのリスクが2つの型に分散されるのである。ハラスメントのリスクや雌の適応度などを測ってみると、リスク分散の可能性を支持する結果が得られつつある。ハラスメントのリスクの分散に関しては、数理モデルを用いた解析により裏付けが取れている。次年度以降、これら2つの効果(資源分割とリスク分散)が個体群の動態などの高次の生態学的現象(個体群動態や群集構造)に与える効果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概ね期待されたデータが得られているものの、1年間の野外調査では十分な量のデータが得られていないため、次年度以降も今年度と同様の調査を行う必要がある。ただし、当初の目標にはなかった興味深い現象も見出すことができたため、計画以上の進展といえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
生物的、無機的環境をコントロールできる人口個体群を創出し、効率的にデータの収集をする。野外に網室(4m×4m)を建て、人口個体群を作り出す予定である。
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Research Products
(14 results)