2011 Fiscal Year Annual Research Report
短工程リモノイド骨格構築法の開発とアザジラクチンの全合成
Project/Area Number |
11J02256
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
氷室 真史 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アザジラクチン / リモノイド / ラジカル環化反応 / Rh触媒 / C-Hアミノ化 / ステロイド |
Research Abstract |
アザジラクチンはインドセンダンより単離、構造決定されたリモノイドの一種であり、高度に酸化された縮環構造を有している。また、捕食昆虫に対しては強力な摂食阻害、変態阻害活性を示すが、哺乳類に対する毒性は非常に低いという興味深い生理活性を示す。アザジラクチンのような複雑な巨大分子を合成する場合には、部分骨格を連結する収束的な方法を用いることが一般的である。しかし、私は複雑な分子の合成でも生合成並みに効率的な分子変換ができれば、短工程での全合成が可能であると考え、研究を開始した。 まず、基本炭素骨格構築法の開発に着手した。ゲラニオールから6工程で鎖状トリエンへと誘導した。合成したトリエンに対し、Mn(OAc)_3を作用させたところ、連続的ラジカル環化が進行し、三つの環を一挙に構築することができた。この三環性化合物をメチルビニルケトンとロビンソン環化することによって、アザジラクチン基本骨格である四環性化合物を合成することができた。この四環性化合物はC8メチル基の擬ステロイド骨格であり、アザジラクチン合成において最も構築困難なC8-C14結合をすでに導入できている。 次に、アザジラクチンの右側部の合成を目的として、C12位の官能基化を行った。検討した結果、Du Boisらが報告したRh触媒を用いた分子内C-Hアミノ化の条件でC12を官能基化することができた。すなわち、C15位にあらかじめアセテートを導入した基質で、C-Hアミノ化を行ったところ高収率、高選択的にC-Hアミノ化が進行し、オキサチアジナンが得られた。その後、C15位アセテートをケトンへ変換し、β脱離させることによってオキサチアジナンを開裂することができた。本方法を用いることによって、これまで困難であったC12の官能基化及びC15位の酸化を同時に達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はラジカル反応を用いることによってリモノイド骨格の構築が達成できた。また、ラジカル反応によって構築困難とされているC8-C14結合を導入した。これまで報告例のない効率的なC12位の官能基化を達成している。以上のことにより、本課題研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したラジカル反応を不斉反応へと展開していく必要がある。そのためには不斉導入の足がかりを持つ反応基質を設定し、合成しなければならない。また、アザジラクチンの全合成研究に関しては、今後は最後の炭素ユニットであるフラン環の導入及びC15位での縮合を行うことによって、右側部の合成を進めていく。アザジラクチンAB環部に関しては、これまで報告されているステロイドの反応を応用することで変換が可能であると考えている。
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