2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02268
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 浩之 九州大学, 工学府・航空宇宙工学専攻, 特別研究員(D1)
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Keywords | 多層カーボンナノチューブ / MWNT / 欠陥 / 熱伝導率 / 長さ依存 / 直径依存 |
Research Abstract |
低次元材料の格子欠陥を制御することによって熱整流作用を実現することが本研究の目的である.低次元材料を用いるのは格子欠陥の影響を顕在化させるためである.現在の技術で最も低次元とされているカーボンナノチューブ(CNT)を用いることで熱整流作用が発生することが本研究グループによる数値計算によって示されている.しかしながら,CNTのような低次元材料の熱伝導特性への欠陥の影響に関する実験例は少ない.特に多層カーボンナノチューブ(MWNT)は3000W/m・Kと高い熱伝導率を有し,CPUやパワーデバイスの放熱材料としての応用が期待されている.その熱伝導特性は欠陥量によって大きく変化すると考えられており,熱伝導率の欠陥依存性を明らかにする工学上の価値は大きい.さらに,MWNTの熱伝導特性は直径依存性や長さ依存性といった特異な傾向を示し,これらの物理的な機構が完全には明らかになっていないことも実用に向けた課題の1つである. そこで我々は熱酸化によって欠陥を導入した孤立多層カーボンナノチューブ(MWNT)の熱伝導率を世界で初めて計測した.さらに透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてMWNTや欠陥を詳細に観察し,熱伝導率の計測結果や数値計算と合わせて考察を行った.これによって,MWNTは合成方法によっては層間にギャップが発生するため直径方向の熱伝導が阻害され,高い熱伝導率を発揮できない可能性があることがわかった.また,層間のギャップのために発生する熱伝導の非等方性によって長さ依存性を説明できることを示した.これは層間のギャップが発生しない合成方法の開発や層間方向の熱抵抗を問題としないデバイスの設計といったMWNTの実用に向けた方法を提案する知見として国内外の学会で高く評価されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠陥を導入したMWNTの熱伝導率計測に成功し,MWNTの放熱材料利用に向けた有用な知見を得ることができたため.また,発表に関しても国際的に評価の高いジャーナルへの査読付論文1件,国内学会1件,国際学会2件と計画以上の成果を残すことができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
CNTに人工的に欠陥を導入することで熱整流作用を発現させ,実験的計測を試みる.熱整流作用を定量的に測定するためH型ナノセンサを用いるが,熱整流作用を検知するためには現在のセンサでは感度が不十分である.センサ長を大きくする,交流電流を用いるといった改良を行なって十分な感度が得ることができるか検討する.なお,熱整流作用を得るためには原子レベルでスムースな界面でありながら界面前後で異なるフォノン特性を有する材料が必要であるが,MWNTに集束イオンビーム(FIB)を照射することによってこのような材料を実現可能であることをすでに確認している.
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Research Products
(4 results)