2012 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液中の有害なイオン種に選択的に応答する蛍光プローブの開発
Project/Area Number |
11J02295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
角谷 繁宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛍光プローブ / 亜鉛 / カドミウム / クマリン / ジピコリルアミン / アミド / 水溶液 / 水酸化物イオン |
Research Abstract |
特定のイオン種に対して選択的に蛍光挙動を変化させる蛍光プローブは、迅速かつ簡便にイオン種の定性・定量分析ができるため、生化学や環境分析の分野で注目を集めている。しかしながら、従来の蛍光プローブの応答は有機溶媒中に限られており、水溶液中で機能する蛍光プローブの報告例は少ない。本研究では、水溶液中の有害イオン種を選択的に検出できる蛍光プローブの開発を目的としている。本年度は、極めて性質の類似した亜鉛イオン(Zn^<2+>)およびカドミウムイオン(Cd^<2+>)に対して異なる波長の蛍光を示すプローブの開発に取り組んだ。 クマリンにアミドおよびジピコリルアミンを連結させた分子を開発した。本分子は中性水溶液中では無蛍光だが、Zn^<2+>およびCd^<2+>の存在下では、それぞれ437nmおよび386nmを極大とする蛍光を示す。一方、他の金属イオンに対しては蛍光を示さない。つまり、本分子はZn^<2+>とCd^<2+>に対して選択的に発光し、これらのイオン種を蛍光波長から識別できる。この異なる蛍光応答はZnおよびCd錯体の配位構造に起因する。これらの錯体は2つのピリジン窒素、アミン窒素、カルボニル酸素を配位子として含むが、Zn錯体は水酸化物イオンが金属中心に配位した構造を形成する。非経験的分子軌道計算によりCdおよびZn錯体の電子密度分布を求めたところ、Cd錯体のHOMOのπ電子はクマリン部位に局在化しているが、LUMOではクマリン部位からピリジン部位にかけて分布する。これは励起によりクマリン部位からピリジン部位への分子内電荷移動が起こることを示している。一方、Zn錯体の場合、HOMOおよびLUMOのπ電子はクマリン部位に局在化しており、電荷移動は起こらない。そのためクマリン部位の電子密度が増加し、Zn錯体は長波長蛍光を出現させる。
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