2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02321
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田代 陽介 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | バイオフィルム / 鞭毛 / ガス小胞 |
Research Abstract |
微生物はバイオフィルムを形成することで、慢性感や水処理膜のファウリングなど、医療・産業の両面で問題を引き起こす。バイオフィルムは薬剤や免疫応答に対する強い耐性を有するため、その除去は非常に困難であり、一度成熟したバイオフィルムを完全に除去する新規手法が求められている。一部の細菌では、ある環境条件にさらされた時に自発的にバイオフィルムから脱離する機構がプロファイリングされている。そこで、その機構を解明して成熟バイオフィルムの脱離手法の開発に繋げるとともに、その知見を基にした膜ファウリング制御への展開を目的とし、研究を実施した。 バイオフィルムを脱離させるためには、細菌の運動性を向上させる必要性がある。細菌の運動性の一つとして鞭毛運動が挙げられる。これまでに葉酸代謝経路がバイオフィルムの構成成分であるアミロイドタンパク合成を調整する事を示してきたが、本年度は網羅的遺伝子解析により葉酸代謝が鞭毛運動をも制御する事を明らかにした。 また、幾つかの細菌は細胞内にガス小胞形成し細菌の浮遊性を調節しており、ガス小胞形成はバイオフィルムの脱離に関与すると考えられる。本年度はガス小胞形成に影響する因子の探索を行い、ガス小胞形成に影響する環境因子ならびに転写制御因子を特定した。 膜濾過技術において、水処理膜上のバイオフィルム形成は透過流速低下などの問題を引き起こしている。本年度は水処理膜上のバイオフィルム形成機構を解析し、膜へのファウリングに重要な因子の特定を行った。その結果、親水性細胞外多糖は疎水性の高い膜への細菌付着を抑制するものの、目詰まりを引き起こす事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオフィルムの脱離に関与する鞭毛運動とガス小胞による浮遊運動の二つの運動性において、それぞれ新たな制御因子を特定し、脱離を促進する機構の解明に繋がったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前述した脱離関連因子を用いてバイオフィルムの脱離手法を考案するとともに、水処理膜におけるバイオファウリングの制御を目指す。
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Research Products
(7 results)