2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工マイクロRNAライブラリーを用いた植物ウイルスの複製複合体の解明
Project/Area Number |
11J02351
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡野 夕香里 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | リンゴステムルービングウイルス |
Research Abstract |
本年度は、ベータフレキシウイルス科カピロウイルス属のRNAウイルスのリンゴステムグルービングウイルス(ASGV)を用いてウイルス感染性に関する解析を行った。同科ウイルスは一般的に複製酵素(RdRp)、移行タンパク質(MP)、外被タンパク質(CP)を互いに独立したORFにコードし、ORF上流から転写されるサブゲノムRNA(sgRNA)をmRNAとしてMPおよびCPを発現する。ところがASGVは、ORF1に241kDaのタンパク質がコードされ、その中にRdRpとCPを含む。ゲノム構造から、ASGVのCPは241kDaのタンパク質の切断によって発現すると考えられていたが、ASGV感染植物からはsgRNA様の2kbと1kbのRNAが検出されることなどから、sgRNAを介しても発現すると考えられるが、sgRNAのウイルスの感染性への影響は不明であった。そこで2kbと1kbのRNAの転写開始点を特定した結果、転写開始点はそれぞれMPおよびCPのORFの上流に存在していた。CPの推定開始コドンの変異体の接種を行った結果、感染は確認されなかった。続いて、2kbと1kbのRNAの転写開始点の上流を比較解析した結果、sgRNAの転写のコアプロモーター様の6塩基の共通配列が見出された。1kbのRNAの6塩基の配列の変異体の接種を行った結果、感染は確認されなかった。以上より、sgRNAを介したCPの発現がASGVの感染性に重要であることが示唆された。一方で、RdRpとCPの間に終止コドンを挿入した変異体ASGVは感染性が低下することが報告されており、RdRp-CPの融合タンパク質もまた感染において機能を持つと考えられる。従ってASGVはRdRp-CPの融合タンパク質とsgRNAという2種類のCP発現様式を有し、そのことが感染性に重要であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにウイルスの感染性に関して得られた結果は、今後植物ウイルスの感染過程の中で複製の段階に関与する因子を特定する上で基礎となる重要な知見である。従って、おおむね順調に研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、植物ウイルスの複製段階における解析を行うため、シロイヌナズナのプロトプラストを用いた単一細胞解析系の構築を行う。具体的には緑色蛍光タンパク質(GFP)をゲノム中に挿入した組み換えウイルスを構築、プロトプラストに接種し、蛍光を観察することによりウイルス複製を確認する。また、シロイヌナズナの人工マイクロRNAライブラリーよりランダムに選んだ人工マイクロRNAをプロトプラストに導入し、ターゲットとなるシロイヌナズナの遺伝子がノックダウンされることを確認する。その後、GFP挿入ウイルスと人工マイクロRNAライブラリーを同時に接種し、GFP蛍光を観察することにより、複製に関与する因子を特定する。
|
Research Products
(8 results)