2011 Fiscal Year Annual Research Report
未スプライシングRNAの核外輸送を防ぐ新規mRNA品質管理機構の解明
Project/Area Number |
11J02501
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
椎森 仁美 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | mRNA品質管理 / 核外輸送 / スプライシング / EJC / Y14 / 線虫 |
Research Abstract |
形質発現の基本となる遺伝子発現の正確性を保証するために、異常なmRNAの発現を防ぐゲートキーパーとなる機構(異常mRNA産生阻止機構)は不可欠である。本研究では、Y14がイントロンを含む未スプライシングRNAの核外輸送や異常スプライシングを抑制する分子機構を解明することを目指し、線虫の生殖細胞性分化過程をモデルとして解析を進めている。 最初に、Y14発現阻害時に示す生殖細胞雄性化の原因を明らかにするため、未スプライシングRNAが細胞質において異常プロセシングを受けて生じる産物を強制発現するトランスジェニック個体を作製した。この個体の生殖細胞が雄性化したことから、未スプライシングRNAの核外漏出の結果として引き起こされる細胞質における異常プロセシングが性決定異常の原因であることを示す。次に、Y14による未スプライシングRNAの核外輸送阻止機構を解明するため、Y14と同様に未スプライシングRNAの核外輸送を阻止する因子を、スプライシング関連因子の中から探索した。その結果、Y14が構成因子の1つであるexon junction complex(EJC)の因子であるeIF4AIIIやUAP56、U2snRNP構成因子、イントロンと相互作用することが報告されているIBP160やPRP19複合体の中核因子が、未スプライシングRNA核外輸送の阻止に働くことを明らかにした。また、Y14が相互作用しているRNAを解析した結果、Y14はmRNA前駆体、成熟mRNAの両方と相互作用していた。これらの結果は、線虫においてY14を含むEJCの中核因子と特定のスプライシング因子が協調して働くことで、未スプライシングRNAの核外漏出を防ぎ、遺伝子発現の正確性を保証している可能性を示唆する。さらに、Y14による異常mRNA産生阻止機構が、線虫の生殖細胞性分化過程において重要な役割を持つことを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Y14による未スプライシングRNAの核外漏出の阻止機構、Y14発現阻害時の未スプライシングRNA核外輸送機構の解明については、関与する因子を同定し、Y14とmRNA前駆体との相互作用も明らかにした。また、細胞質における異常プロセシングが性決定異常の原因であることを明らかにした。以上から、研究の目的に対し、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Y14による未スプライシングRNAの核外漏出の阻止機構の解明については、Y14と、これまでの解析から関与が示唆された因子との相互作用を解析するとともに、スプライシング反応のどのような段階でこの阻止機構がはたらくのかを明らかにすることによって、未スプライシングRNAの核外漏出阻止機構の分子的背景を明らかにする。細胞質における異常プロセシングに関しては、どのようなシス配列、あるいは配列的特徴が重要なのかを検証するとともに、IRE1が実際にこの異常プロセシングを起こす本体なのかをin vitro系の構築を試みることによって生化学的に明らかにする。
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Research Products
(3 results)