2011 Fiscal Year Annual Research Report
動物細胞におけるオーキシン誘導デグロン法を応用した、合成生物学的遺伝学の創出
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11J02503
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
西村 浩平 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | オーキシン / デグロン / 遺伝学 |
Research Abstract |
研究課題の目的は,AID法の最適化を図った上で,AID法(合成生物学)と動物細胞における相同組換えによる遺伝子改変技術(分子遺伝学)とを組み合わせることによって、本技術を転写制御に代わる速やかなタンパク質発現制御システムとして確立し、最終的にはホ乳動物の細胞および個体における遺伝学の発展に寄与することである。現在使用しているaidタグは229アミノ酸(約29kDa)の植物由来のタンパク質である。このタンパク質において分解に必要な最小領域を決定し、タグの大きさを従来の1/3に縮小することに成功した。また同種の酵母類である分裂酵母においてもオーキシンデグロン法が有効であることを示した。さらにニワトリのDT40細胞を用い、従来の相同組換えによる遺伝子破壊と組み合わせることによって、条件特異的にタンパク質の分解を誘導する株を作成し、この株を用いた研究によって、現在、高等真核生物にのみ存在するMcm8,Mcm9およびMCM-BPといった因子の機能解析を行った。しかしながら、Mcm8,Mcm9の株においてはオーキシン添加後、タンパク質は速やかに分解されたが、細胞の増殖には影響が見られなかった。そこで、MCM8,MCM9の各遺伝子に対してノックアウト細胞を作製したところノックアウト細胞を作製することができた。以上の結果はMcm8,Mcm9がMcm2-7とは異なり、DNA複製という細胞の増殖に必須な過程において、重要な働きをしていないことを示している。MCM-BPに対する条件特異的変異株を作製したところ、細胞はオーキシン依存的に増殖を停止し、その時に細胞はG2/M期において蓄積することが明らかとなった。今後、このような条件特異的変異株によって高等真核生物における遺伝学が大きく進展すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の実験によって、オーキシンデグロン法を用いた際、タンパク質の分解により、表現型が得られることが明らかとなった。また、表現型の得られなかったMcm8,Mcm9の株においても表現型が得られなかったというよりは当初の予定と表現型が異なっていたと解釈することができるため、この方法を利用することで、高等新各生物においても高度な遺伝学的研究を行いうることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
オーキシンデグロン法を動物細胞や個体に導入する際には内在性の遺伝子を改変する必要がある。そのため、これまではDT40細胞のような相同組換えによる遺伝子変換の容易な細胞を用いてきた。しかしながら、昨年度、人工的に設計されたヌクレアーゼを用いて、遺伝子改変を行う技術(Zn nuclease,TALENなど)が開発され、これにより、様々な細胞、個体において、容易に遺伝し改変を行えるようになった。そのため、この技術とオーキシンデグロン法を組み合わせて、今までは難しかったホ乳動物の細胞における条件特異的変異株の作成二着手しようと考えている。
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