2011 Fiscal Year Annual Research Report
悪性骨軟部腫瘍における新規薬物治療開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
11J02513
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠藤 誠 九州大学, 大学院・医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 軟部肉腫 / 悪性末梢神経鞘腫瘍 / mTOR / 阻害薬 |
Research Abstract |
軟部肉腫の1つである悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)135例のホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて、AKT-mTOR系およびMAPK系各因子の免疫染色を行った。その結果、初発例における陽性率はそれぞれ、リン酸化AKT 58.2%、リン酸化mTOR 47.3%、リン酸化S6RP 57,1%、リン酸化p70S6K 53.8%、リン酸化4E-BP1 62.6%、リン酸化MEK1/2 93.4%、リン酸化ERK1/2 81.3%であり、MPNSTにおいて、AKT-mTOR系は約半数から6割の症例で、MAPK系は約8割から9割の症例で活性化していることが明らかとなった。 腫瘍組織凍結標本を用いたウエスタンブロットの結果は、上記免疫染色の結果を裏付けるものであった。 臨床病理学的因子との関連を解析すると、深部発生例で、リン酸化AKT,リン酸化mTOR,リン酸化S6RP,リン酸化4EBP1,リン酸化ERK1/2の陽性例が多く、また、腫瘍の核分裂像および組織学的悪性度とリン酸化4E-BP1,リン酸化ERK1/2の発現に関連がみられた。 予後との関連をみると、単変量解析にて、リン酸化AKT,リン酸化mTOR,リン酸化S6RPの陽性例が有意に予後不良であった。MAPK系因子の活性化と予後との関連はみられず、MPNSTにおける予後予測には、AKT-mTOR系の活性化状況が重要である事が明らかとなった。多変量解析では、リン酸化mTOR陽性が唯一の独立した予後因子であった。 次にMPNST細胞株6株を用いて、mTOR阻害薬の抗腫瘍効果を検証した。 mTOR阻害薬の1つであるエベロリムスを用いて、in vitroでの細胞増殖能への影響をみたところ、いずれの細胞株でも薬剤濃度依存性に細胞増殖が抑制された。 Wound healing assayを用いた遊走能の検証では、エベロリムスによる有意な遊走能低下がみられた。 Matrigel invasion assayを用いた浸潤能の検証では、エベロリムスによる浸潤能の低下がみられた。 以上より、軟部肉腫の1つであるMPNSTにおいて、AKT-mTOR-S6RPシグナル伝達系が高悪性化に関与する事が明らかとなった。その阻害薬であるエベロリムスはMPNST細胞株に対して抗腫瘍効果を示し、新規治療薬として有望であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の初期段階で行ったスクリーニング評価によって、予後と相関する因子を早い段階で発見できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって得られた知見を発展させるべく、シグナル伝達系活性化の原因/機序の解析ならびにシグナル伝達系の下流に存在する因子について解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)