2012 Fiscal Year Annual Research Report
ロイコトリエンB4第2受容体(BLT2)の大腸癌発症と皮膚創傷治癒における役割
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11J02517
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
劉 ミン 九州大学, 医学研究院・生化学分野, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生理活性脂質 / GPCR / 皮膚創傷治癒 / 大腸癌 |
Research Abstract |
本研究では、腸管上皮細胞や皮膚表皮ケラチノサイトに発現するGタンパク質共役型受容体一BLT2の大腸癌発生における役割と皮膚創傷治癒における役割を解析した。 1、大腸癌発生におけるBLT2の役割 これまでの研究の結果より、大腸癌を生後3ヶ月より自然発症するAPCmin/+を背景とするモデル、発癌誘導物質であるAOMと、腸炎誘導物質であるDSSを組み合わせて大腸癌を発症させるモデルにおいて、BLT2欠損マウスでは対照群マウスと比較して、大腸癌の発生率が上昇することが明らかとなった。これはBLT2が大腸癌発生を抑制することを示唆している。そこで、我々はVillinプロモーターの下流にBLT2遺伝子をつないだトランスジェニックマウスを作製し、大腸および小腸の上皮でBLT2が過剰発現していることを確認した。今後、このマウスを用いて同様の発癌モデルを行い、BLT2シグナルの癌発生における役割を調べていく予定である。 2、皮膚の創傷治癒におけるBLT2の役割。 (1)BLT2欠損マウス由来の初代培養ケラチノサイトを用いた解析: 野性型マウス由来の初代培養ケラチノサイトではBLT2リガンド依存的に細胞の移動が亢進したのに対し、BLT2欠損マウス由来のケラチノサイトではBLT2リガンド添加による細胞の移動の亢進が観察されなかったことから、BLT2シグナルは細胞の移動を促進すると考えられる。 (2)NSAID投与したマウスを用いた創傷治癒の解析:NSAIDはCOXを阻害し、BLT2リガンドである12-HHTの産生を抑制する。背中の皮膚を円形にパンチした後の治癒の速度を穴の面積を測定して評価したところ、NSAID投与したマウスで初期(創傷2-3日目)に治癒の遅延が観察された。そこで、創傷2日目の皮膚組織のHE染色およびケラチノサイトの増殖を評価するためのKi67免疫染色を行ったところ、NSAID投与によりケラチノサイトの移動の遅延は観察されたものの、細胞増殖の変化は観察されなかった。 (3)BLT2アゴニスト塗布の皮膚創傷治癒に与える影響:野性型マウスと糖尿病モデルdb/dbマウスを用いて、10μM BLT2アゴニストをワセリンに混合して皮膚創傷部位に毎日塗布した。ワセリンのみを塗布したマウスを比較して、BLT2アゴニスト/ワセリンを塗布したマウスでは皮膚の創傷治癒が促進した。以上のことから、BLT2アゴニストは創傷治癒薬となり得るのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に皮膚の創傷治癒におけるBLT2の役割の研究が順調に進んでいる。BLT2過剰発見HaCaT細胞、BLT2欠損マウスを用いて、BLT2がケラチノサイトの移動を亢進させ、創傷治癒に貢献していることを明らかにし、さらにその詳細なメカニズムの解明も終わっている。現在論文を投稿して、2回目のリバイス中である。 大腸癌発症におけるBLT2の役割の研究は初期段階の研究を終え、BLT2欠損により大腸癌発生が亢進することを明らかにしている。一方、マウス腸管でBLT2を発現する(Villin-promoter)のトランスジェニックマウスを作出した。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚の創傷治癒におけるBLT2の役割の研究は現在論文を投稿して、2回目のリバイス中である。 大腸癌発症におけるBLT2の役割の研究は、Villin-BLT2トランスジェニックマウスを用いて大腸癌発生抑制の分子学的なメカニズムの解明は行う予定である。
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Research Products
(1 results)