2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 怜 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エボラウイルス / アレナウイルス / コウモリ / カニクイザル / リバースジェネティクス / ミニゲノム |
Research Abstract |
今年度もエボラウイルス及びアレナウイルスに関する研究を行った。 エボラウイルスに関する研究では、フィリピンミンダナオで採材したオオコウモリ70匹の血清を用い、エボラウイルス核蛋白及び膜糖蛋白に対する抗体の有無を調査した。その結果、同所で捕獲したルーセットオオコウモリ37匹中15匹が核蛋白あるいは膜糖蛋白抗体陽性であった。 フィリピンのルソン島だけでなくミンダナオ島に関してもレストンエボラウイルスの感染環がある可能性が示唆された。しかしながら、エボラウイルスが属するフィロウイルス科全てを網羅するプライマーを用い脾臓から遺伝子検出を試みたが、ウイルス遺伝子を検出することは出来なかった。 また、同ウイルスに感染し出血熱を呈したカニクイザルの血清を用い、免疫動態の解析も行った。膜糖蛋白に対する抗体上昇とウイルス排他に有為の関係性があり、一方で核蛋白に対する抗体の上昇とウイルス排他には相関性がみられなかった。血中のサイトカイン・ケモカイン量を解析した結果、ヒトのエボラ出血熱と似た解析結果が得られた。 アレナウイルスに関する研究では、同ウイルスのリバースジェネティクス法及びLsegmentに対するミニゲノムシステムを確立した。また、遺伝子非翻訳領域を欠損させ解析した結果、ウイルス遺伝子のSセグメントの5'非翻訳領域の一部を欠損させると遺伝子複製効率が下がり、ウイルスが産生されないことがわかった。今後さらに狭い領域を欠損させた変異体を作製していき、詳細な解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エボラウイルスに関する研究は、サルにおける病態生理の解析を終了した。また、疫学研究は今年度調査分は全て終了し、2013年度分の解析を残すのみである。アレナウイルスに関する研究は、研究申請時に目的として挙げていたリバースジェネティクス法及びミニゲノム法の確立に成功した。現在遺伝子へ変異を加え機能解析をおこなっており予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エボラウイルスに関する研究では引き続きフィリピンにおいてコウモリを採取し疫学的研究を続行する。カニクイザルにおける免疫応答の解析は今年度をもって目標を達成したため以後は行う予定はない。 アレナウイルスに対する研究は引き続き非翻訳領域に変異を加え欠損変異体を作製し、ウイルスの増殖効率、複製効率を観察し、変異を加えたことで形質にどの様な影響が出たかを検討していく。
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