2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02565
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井土 宏 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 磁性 |
Research Abstract |
本研究課題では巨大スピン蓄積効果を用いた電子相制御の実現を目標としている。その実現に向けて、非磁性体中へより大きなスピン蓄積の誘起する手法、その際のスピン蓄積の偏極方向、非磁性対中のスピン緩和機構などをまず明らかにすることが重要であると考えられる。そこで、初年度にあたる平成23年度においては、主にNi-Fe(Py)/MgO/Agからなる素子を用いて、これらを調べた。 まず、非磁性体中により大きなスピン蓄積を誘起するために、Ni-Fe(Py)/MgO/Ag界面の性質を調べた。その結果、高いスピン注入効率を保ちながら、低抵抗界面を用いることに成功した。このため、より大きな電流を印加することが可能となった。さらに、注入端子の形状を最適化することで、230mΩという非常に大きな信号強度に増強することに成功した。 また、スピン蓄積の磁場依存性について詳細に調べた。非局所スピン注入により非磁性体中に誘起されたスピン蓄積は、外部磁場によりLarmor歳差運動が誘起されると考えられる。これまでの研究では、主に非磁性体金属Alに対してこの効果が報告されていたが、Agに対しては報告されていなかった。本年度の研究では、スピンを長距離に伝播させることで、Larmor歳差運動を明瞭に観測できることを明らかにした。 さらに、温度依存性を調べることにより、非局所法により非磁性体に誘起されたスピン蓄積がElliot-Yafet機構により緩和することを明らかにした。この機構では、縮退したBloch電子状態がスピン軌道相互作用により分裂するため、スピンに依存しない相互作用である、格子振動、結晶粒界、非磁性不純物などによりスピン反転が起こる。実験的に得られたスピン緩和時間など、非局所スピン注入法による物性値の温度依存性が、Bloch-Gruneisen理論などによりよく表されることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計にそって研究が進展し、4件の論文発表、4件の学会発表につながった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られたスピン蓄積素子に関する知見を生かして、相転移を誘起する対象物質との複合素子の作製を行う。
|