2011 Fiscal Year Annual Research Report
水和ゲル内に生成するリン酸カルシウム結晶の相、形態および配向性の制御
Project/Area Number |
11J02593
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横井 太史 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒドロキシアパタイト / リン酸八カルシウム / 結晶成長 / ゲル法 / 水和ゲル / バイオミメティクス |
Research Abstract |
生体が無機固体材料を合成するプロセス(バイオミネラリゼーション)に倣った材料の合成法は、高機能な材料を低環境負荷で合成できる方法として注目されている。水和ゲル内において難溶性無機化合物の析出を行うゲル法は、生体を模倣した合成反応(バイオミメティックプロセス)の一つとみなされている。 本研究ではゲル内に生成するリン酸カルシウム結晶の相、形態および結晶の配向性の観点で体系的な知見を得るために、ゲル内における無機結晶の生成に影響を及ぼすと考えられる因子としてゲルのポリマー濃度、反応温度、イオン濃度などの実験パラメータを挙げた。平成23年度は、特にゲルのポリマー濃度および反応温度がゲル内に生成するリン酸カルシウム結晶に及ぼす影響を調べた。 ゲルを構成するポリマー濃度が結晶の形態に与える影響を調べるために、0.5~3.0mol・dm^<-3>(M)の範囲でポリマー濃度を変えたポリアクリルアミドゲルを合成し、これを反応場として用いた。生成したリン酸カルシウムの結晶相をX線回折によって調べたところ、ポリマー濃度に依存せずリン酸八カルシウム(OCP)が生成した。生成したOCPの形態を走査電子顕微鏡により観察したところ、ポリマー濃度の増大に伴って、ウニに似た形態から毛糸玉の似た形態に変化するとともに、球状結晶上に繊維状結晶が新たに生成する現象を見出した。さらに、反応温度を4、40および80℃とし、反応温度がリン酸カルシウムの生成挙動に与える影響を調べた。その結果、4および40℃においては球状のOCPが生成し、80℃においては、1~5mm程度の長さの配向したロッド状ヒドロキシアパタイト(HAp)が生成することを見出した。 以上の知見は、ゲル内におけるリン酸カルシウムの結晶相は主に反応温度に支配されていることを明らかにしている。この成果は、ゲル法による高機能材料のバイオミメティックな合成の指針になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は水和ゲルの濃度および反応温度がリン酸カルシウムの生成に与える影響を調べることを目的とした。これらを調べるための実験を実施し、これらのパラメータが生成するリン酸カルシウムの結晶形態、結晶相ならびに結晶の配向性に及ぼす影響を明らかにすることができた。研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、これまでの成果に基づいて骨類似構造を有する組織制御型リン酸カルシウム-水和ゲルハイブリッド材料の創製に取り組む。水和ゲルとしては、これまでに用いてきたポリアクリルアミドに加えて生分解性の高分子を使用する。水和ゲル内に生成したリン酸カルシウム結晶の相、形態および配向性をそれぞれX線回折と走査電子顕微鏡によって調べる。さらに、ハイブリッド材料の骨修復材料としての力学的・生物学的親和性を調べる。これらの知見を総括して、ゲル法による骨組織代替材料の材料設計指針を確立する。
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