2011 Fiscal Year Annual Research Report
胎児筋に発現する新規カルパインによる組織形成機序の遺伝子改変マウスを用いた解析
Project/Area Number |
11J02638
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
礪波 一夫 財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 特別研究員(PD)
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Keywords | カルパイン / 胎児筋 / 筋分化 / 筋再生 |
Research Abstract |
当該年度はカルパイン6(CAPN6)のノックアウトマウス(KO)を用いて、その表現型の解析からCAPN6の胎児筋形成における役割の一端を明らかとした。CAPN6は胎児期の筋組織に特異的な発現が認められているため、Capn6 KOと野生型(WT)の胎児筋を切片により比較したところ、Capn6 KOでは筋組織の構築過程における筋管や横紋構造の形成亢進が認められた。さらに、筋分化の進展に伴って発現誘導されるDesminの免疫染色のシグナル強度を比較したところ、18.5日胚のCapn6 KOにおいてWTより強いシグナルを認め、以上の結果からCapn6のKOにより筋組織の形成が亢進している可能性が示唆された。また、成獣骨格筋から樹立した初代培養細胞の筋分化誘導過程においてもCAPN6の発現誘導を認めた。以上の結果は、CAPN6が筋組織の形態形成に対して抑制的に働きかけていることを初めて示唆した知見である。 さらに本研究では、成獣マウスの前脛骨筋にカルジオトキシン(筋組織を特異的に破壊するヘビ毒)を投与し、筋組織破壊後に誘導される再生筋におけるCAPN6の発現と役割を解析した。その結果、カルジオトキシン投与後48時間後(筋再生が誘導される時間)には成獣マウスの骨格筋においてもCAPN6が発現誘導されていることが明らかとなった。さらに、Capn6 KOとWTで再生筋(中心核により識別)の構築を比較したところ、Capn6 KOの再生筋の筋径がWTのものと比較して有意に大きく、再生筋においてもCAPN6の欠損は筋分化および組織構築を促進する方向に作用していることが明らかとなった。これらの結果は、筋萎縮が筋再生能力を上回ってしまう筋ジストロフィーの病態発現において、CAPN6の発現抑制が病態進行を遅延させる可能性を示唆しており、その治療におけるCAPN6の役割を期待させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCAPN6の遺伝子改変マウスの解析により、CAPN6が胎児筋の発生にどのような影響を与えているかを明らかとし、さらに筋再生における役割を示唆した点は大きな進展であった。しかしながら、その病態との関わりや機能発現機構については未解決であり、来年度以降の課題である。このような理由から(2)と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点においてCAPN6の生理機能発現における分子機構、並びにその病態発現との関わりについては殆ど明らかとなっていない。そこで、本研究ではCapn6 KOとWTにおけるタンパク質発現動態をマイクロアレイ解析および差分プロテオーム解析により明らかにする予定である。病態との関連については、筋ジストロフィーの責任遺伝子の1つであるCapn3とCapn6との二重KOの作出、解析を行いCAPN6が筋委縮病変にどのように関与するかを明らかにする予定である。また、最近CAPN6と動脈硬化の関連が示唆されていることから、CAPN6が動脈硬化にどのように関わるのか、組織炎症との関連も含め新たなトピックスとして今後共同研究の中で取り組んでいく。
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