2012 Fiscal Year Annual Research Report
胎児筋に発現する新規カルパインによる組織形成機序の遺伝子改変マウスを用いた解析
Project/Area Number |
11J02638
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
礪波 一夫 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 特別研究員(PD)
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Keywords | カルパイン / 筋発生 / 筋再生 / プロテアーゼ / 筋ジストロフィー |
Research Abstract |
カルパインはタンパク質の切断により細胞や生体を調節する酵素であるが、カルパイン6(CAPN6)は、ヒトカルパインの中で唯一活性中心を欠失したユニークな分子種である。本研究では、CAPN6の生理機能の解析に取り組んでいるが、本年度は昨年度から継続して、Capn6遺伝子破壊マウス(KO)の解析を行った。昨年度までの解析で、Capn6 KOの胎児筋における筋管や横紋構造の形態から、CAPN6の欠損が胎児筋の形態形成に亢進的な影響を与えることが示唆されていた。本年度はさらにこれを定量的方法で検証すべく胎児筋の横断面積や筋組織を構築する分子の定量を行った。その結果、Capn6 KOでは野生型(あるいはヘテロ接合体)と比較して、胎児筋の横断面積およびデスミンやサルコメアアクチンと言った筋組織を形作る細胞骨格分子の発現量が有意に大きいことが明らかとなり、CAPN6が胎児期の筋組織形成に対して抑制的に作用しているという新規の生理機能を同定した。さらに、成獣マウスの骨格筋にカルジオトキシンを注射し、その壊死後に誘導される再生筋を解析したところ、CAPN6は筋再生過程においても誘導されていることが明らかとなった。そこで、筋再生においてもCAPN6欠損の影響を調べたところ、Capn6 KO再生筋ではその筋径および周産期型ミオシンの発現が亢進していることを明らかとした。即ちCAPN6が骨格筋の発生期だけでなく再生過程においても発現誘導を受け、抑制的に機能することを明らかとした。これらの結果は非プロテアーゼ型カルパインであるCAPN6による筋組織の発生および再生における抑制的調節機能を初めて明らかとしたものであり、さらにカルパイン分子のプロテアーゼ活性に依存しない新規機能を示唆するものとしても意義が大きい。また、CAPN6の下方制御は筋萎縮疾患治療への応用の可能性も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCapn6の遺伝子改変マウスを用いた解析から、CAPN6の欠損により筋組織の発生ならびに再生が亢進することを分子レベルから定量的に明らかにすることが出来た。デスミンおよびサルコメアアクチンと言った具体的な分子の発現量から上記の点を明らかにしたことは、本年度の計画目標の柱の1つをクリアしていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の今後の推進方策については、1、CAPN6が筋組織の分化あるいは再生においてどのような役割を果たしているのかを明らかとするため、初代培養細胞を用いた細胞レベルでの解析を進めること、2、筋ジストロフィーの責任遺伝子であるCapn3とCapn6の二重変異マウスの解析を行い、CAPN6を標的とした筋萎縮疾患治療への応用を目標とした展開、を予定している。
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