2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体系における水の並進エントロピーの重要性 : 統計力学理論解析
Project/Area Number |
11J02654
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 健一 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 生物物理 / 液体の統計力学 / 水和自由エネルギー / 水和エントロピー / 水和エネルギー / タンパク質 / AFM / エネルギー科学 |
Research Abstract |
ATP駆動タンパク質における水のエントロピーの重要性を調べるために、アクトミオシン・シャペロニンGroEL・多剤排出タンパク質に注目した。左記3つともATP駆動タンパク質であり、生体内で重要な役割を担っているが、それらの物理的メカニズムはほとんど解明されていない。特に、それらの機能における水の役割は全く解明されていないに等しい。アクトミオシンに関する論文は去年出しており、本年はその研究の追加計算を行った。ミオシンのアクチンフィラメントへの結合に伴う水和エントロピーや脱水和エネルギー損失を計算した。また、ショ糖添加の効果を調べるために、二成分系流体中で計算するためのプログラムの準備もした。シャペロニンGroELに関する論文も去年出しており、本年はその研究の詳細版を論文として1本だした。また、この研究の派生研究として、吉森明(九州大学理学研究院)と「大球溶質の筒型溶質への挿入のダイナミクス」に関する共同研究にも着手した。多剤排出タンパク質に関する論文はまだ出していないが、その研究における試計算はいくつか行った。 研究課題に関わる派生研究として、去年、溶媒中ポリマーの構造的性質を計算するための効率的な計算手法を提案し、論文化した。今年は、本手法を用いて、ポリマーの微細孔の通過を研究した。また、今後ナノテクや生物物理で重要となってくると考えられる溶媒内一次元イジングシステムの研究も行い、論文として提出した(査読中)。 博士号取得後、研究室を京都大学エネルギー理工学研究所(木下正弘研究室)から神戸大学大学院理学研究科(大西洋・木村建次郎研究室)に変更した。ここでも、水のエントロピーに関連した研究を始めた。例えば、疎水性・親水性の表面が交互に並んだ膜と探針間のフォースカーブの解析や、液中AFMから測定されるフォースカーブを元に膜表面に形成された純粋な水和構造の計算方法の開発にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は博士号取得に尽力した事や所属研究室の変更を考えると、上記9の達成度で「(2)おおむね順調に進展している」と判断できる。主な成果は出版受理された論文1本であるが、その他、第一著者として論文を1本提出,共同研究2件の着手、液中AFM関連の研究3件の着手をした。また、学会発表にも尽力し、全7件の発表を行った。この様に、研究活動はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
アクトミオシンの研究では、ショ糖を添加した際の効果を調べるために二成分系流体のプログラムを完成させ→計算→解析する。シャペロニンGroELの研究では、大球溶質の筒型溶質への挿入のダイナミクスを論文化する。多剤排出タンパク質の研究では、薬物の排出メカニズムの解明に尽力する。溶媒内一次元イジングシステムの研究では、溶媒粒子サイズの効果などを研究する。また、溶媒内二次元イジングシステムの研究も行う。液中AFM関連の研究では、測定機器使用の習得も行いつつ、上記9に書いた研究(疎水性・親水性の表面が交互に並んでいる際の膜と探針間のフォースカーブの解析や液中AFMから測定されるフォースカーブを元に膜表面に形成された純粋な水和構造の計算方法の開発)に尽力する。 研究課題と現在の研究に変更は無いが、研究計画の変更点は以下の通りである。溶媒内イジングシステムの研究や、AFM関連の研究が加わった事。また、所属研究室が変更した事によって、主な研究トピックがATP駆動タンパク質からAFM関連に遷移しつつある事である。
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