2011 Fiscal Year Annual Research Report
浮上磁場MHD数値計算による太陽磁束生成輸送過程の解明
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11J02673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥海 森 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 太陽 / 磁場 / 黒点 / MHD |
Research Abstract |
今年度は、はじめに太陽黒点形成に関する大規模な3次元数値シミュレーションを完成させた。これは当初の研究計画において、初年度の目標としたことである。申請者がこれまで用いてきた2次元シミュレーションコードを3次元に拡張し、計算の大規模化に備えて出力データ削減に努めた。2次元計算結果の結果は英文査読誌に報告された。以上で作られた3次元コードを、国立天文台天文シミュレーション用スーパーコンピュータ(CfCA)にて実行し、太陽対流層の深さ2万kmからの磁束浮上を計算した。シミュレーション結果を解析し、黒点形成過程に関する物理的な描像を得た。具体的には、太陽中を浮上する磁場は表面直下で減速し、平板な構造を取ることが分かった。これらの成果を英文査読誌や国際・国内学会において発表した。 また、上記の3次元シミュレーションで得られた物理的な描像に関して、実際の太陽の観測結果と比較を行うため、人工衛星によって得られた太陽観測データの解析研究を行った。まず、日本の太陽観測衛星「ひので」の可視光望遠鏡データについて解析を行い、黒点出現時の表面磁場分布に関して特徴的な方向性・空間構造を持つことを明らかにした。この空間構造は3次元シミュレーションとの結果と整合的であったことから、表面磁場観測によって太陽内部の磁場構造を推定するのに役立つ可能性あることが分かった。この成果は国際・国内学会において発表された。 さらに、太陽観測衛星SDOの観測データ解析を行った。その結果、太陽表面に黒点が出現する直前に強い水平発散流が現れることが分かった。この水平流は3次元数値シミュレーションによって予言されていたものである。本研究の重要性としては、水平流を観測することで将来発生する黒点を数時間前に予測できる可能性があるということである。この成果は、国内学会で報告された。また、英文査読誌にも受理済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、今年度は3次元数値シミュレーションの完成を目標としていた。しかし、実際には2次元・3次元計算の実行・解析と成果の出版に達したのみならず、人工衛星を用いた観測的な研究についても2種類の成果を挙げることが出来た。したがって、当初の計画以上に研究が進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)数値シミュレーションのパラメータ研究、(2)観測研究の統計解析を進める。(1)の数値シミュレーションについては、当初計画では対流層底部からの大規模計算を予定していたが、今年度の研究によって興味深い物理的描像を導き出すことが出来たため、初期パラメータを変化させた多数のシミュレーションを行うことによって黒点形成過程をより詳細に追究することとした。計算コードは既に完成しているため、研究の遂行に支障はない。(2)の観測研究については、既に当初計画の目標を上回る成果が得られているが、観測例を大幅に増やすことで観測結果の普遍性を探る予定である。
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