2012 Fiscal Year Annual Research Report
浮上磁場MHD数値計算による太陽磁束生成輸送過程の解明
Project/Area Number |
11J02673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥海 森 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 太陽 / 磁場 / 黒点 / MHD |
Research Abstract |
今年度は、磁束浮上・黒点形成3次元数値シミュレーションについて計算パラメータを変更した計算を8例実施した。特に太陽表面に見られる強い流速場に焦点を当てて解析を行い、速度場のパラメータ依存性を明らかにした。 このパラメータ研究の成果は、英文査読誌として投稿し、既に受理済みである。 これまで申請者が行ってきた2次元・3次元数値シミュレーションでは、太陽表面に磁場が出現し黒点を形成する前に強い水平発散流が出現することが理論的に予測されていた。この流速場の存在を観測的に実証すべく、第1年度目(平成23年8月-9月)に米国スタンフォード大学に滞在し太陽観測衛星SDOのデータ解析を行った。今年度は以上の滞在研究による成果をまとめ、英文査読誌として出版、国内・国際学会にて報告した。 さらに、これまでのシミュレーションの結果からは、太陽内部(対流層)を磁場が浮上する際、対流層の最上部で浮上磁場が減速する可能性が示唆されていた。このことに関連し、今年度6月-7月にはスタンフォード大学を再度訪問し、日震学(太陽内部を観測する地震学)的な手法を用いて太陽観測衛星SOHOのデータ解析を共同研究として行った。その結果、太陽対流層最上部において磁場が浮上・減速する様子を間接的にではあるが検証することができた。成果を英文査読誌として報告するべく、現在投稿・査読中である。 太陽系で最大の爆発現象である太陽フレアは、特に複雑な形状をした黒点領域に生じることが知られている。今年度は名古屋大学の草野完也教授らとフレアの発生過程・発生条件について共同研究を行った。申請者を共著者とした英文査読論文を出版し、本研究に関するプレスリリースも行った。さらに、申請者を主著者として、太陽の浮上磁場・黒点形成のフレア発生に対する影響について発展的な研究を行った。成果は国内・国際学会で発表され、英文査読誌として出版するため現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2年度目の目標として太陽観測衛星「ひので」やSDOなどの観測データを用いた比較研究を予定していた。しかし、今年度は観測データとの比較以上に、太陽の内部を診断する「日震学」という手法を用いた、磁束浮上領域の内部観測という発展的な解析にも取り組むことができ、すでに成果は国内・国際学会で発表されている。したがって、当初の計画以上に研究が進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、(1)対流入り磁束浮上数値シミュレーションの実施と、(2)日震学的研究の発展を予定している。実際の太陽表面は様々なスケールの局所対流が生じており、これは申請者がこれまで行ってきたシミュレーションでは省略されていた効果である。したがって、局所対流を含む浮上シミュレーションを行い、また、2年度目に遂行した日震学的解析研究との比較を行うことを目標とする。2年度目に行った日震学的研究は、1例のみの解析であったが、今後は観測数を増やすことで観測結果の普遍性・妥当性を検討したい。
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