2012 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線耐性と光応答の種間差が植物ダニの捕食回避と群集集合メカニズムに与える影響
Project/Area Number |
11J02696
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須藤 正彬 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ダニ / 太陽光紫外線 / 高温障害 / 季節消長 / 個体群動態 / ヒメハダニ / 環境ストレス |
Research Abstract |
太陽光の中波長紫外線(UVB)はダニの卵に致死的な有害作用をもたらす。またUVB強度は季節によって変動し、さらに卵の発育期間は温度に依存するため、寄主葉上でダニが卵期間を通じて受ける太陽光UVBの影響は季節に依存すると考えられる。従ってダニにおける産卵場所としての、葉表の利用可能性には太陽エネルギーの季節変動が関与し、その季節的な個体群動態を決定する要因となっていると予想される。平成24年度の研究実施にあたり「太陽光が植食性ダニ個体群の季節消長にもたらす影響」の解明を目標として定めた。 太陽光UVの有無が、葉の上面を産卵場所として利用する植食者であるチャノヒメハダニの卵生死に与える影響を、2012年の5月から10月までの各月に調査した。UVをカットする実験処理によって、卵孵化率は春と秋において有意に回復した一方、夏期にはUVをカットした処理区でも大多数の卵が死亡したため、夏期の高温も主要な卵死亡要因と考えられた。本結果について同時期の気象観測データへの当てはめを行ったところ、各季節に対応する卵期間は気温により、その時点での卵孵化率は「卵期間中の積算UVB照射量」および「卵期間中の平均日最高気温」の2要因モデルにより、それぞれ予測できることが判明した。 この結果および2002年から2012年までの京都市における気象観測データに基づき、各季節におけるチャノヒメハダニの予想卵期間、その間の積算UVB照射量および平均日最高気温から、卵孵化率を計算する決定論的モデルを構築した。これにより寄主葉上面での卵生存可能性をシミュレートしたところ、初夏および秋に2回の極大期を迎え、うち最大となる秋のピークが、野外寄主植物におけるチャノヒメハダニ個体群の出現時期に一致した。従って、太陽エネルギーはUVBと温度(放射熱)の相互作用を通じて、チャノヒメハダニの季節的な個体群消長を決定する要因の一つになっていると結論付けられた。
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Research Products
(8 results)