2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石野 一晴 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 東洋史 / 明清史 / 巡礼 / 民間信仰 / 女性神 |
Research Abstract |
昨年度も引き続き国内外の所蔵機関において中国の女性神に関わる文献調査を行った。昨年、度より京都大学人文科学研究所の漢字情報研究センターが耐震工事により閉鎖されているため、国内では主に国立公文書館、国立国会図書館に出張して明清時代の地方志と文集を閲覧した。 また、海外の所蔵機関における調査を重点的に行った。昨年8月に上海図書館善本室および北京の国家図書館善本室、昨年11月に上海図書館善本室、本年2月に北京の国家図書館善本室を訪れ、史料の調査・複写を行った。調査の結果、善本指定されていない抄本のなかに大変貴重な明代の宗教に関わる記録が残されていることがわかり、関連文献と合わせて調査した。 このような調査の成果として、昨年11月に開催された東洋史研究会大会において「曇陽大師の追憶―明末における士大夫と「宗教」―」と題する口頭報告を行った。曇陽大師は王錫爵の娘であったが、道教の神々に師事して修行を行い、万暦8年(1580年)に昇仙するまで数多の不思議な現象を引き起こし、多くの士大夫の支持を得た。彼女の一生の語られ方には、同時代の女性神をめぐる物語と共通する部分が多く、中国において女性神がいかなる存在であったのか理解する鍵を提供することになるだろう。 また、上記の調査と並行して、京都の名刹泉涌寺に安置される「楊貴妃観音」という女性の名前を冠した仏像について、その源流や、中国における観音の女性化に関する諸問題について考察した文章を、近日中に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文の投稿までには至らなかったが、文献調査は順調に進めることができた。とりわけ海外での文献調査では、国内で閲覧できる文献の不足を補うことができ、予想以上の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に昨年度と同様に史料を丹念に読み込む作業を進める。近年報告された論文によれば、中国の女神信仰は、申請者の事前の推定よりも広範な地域に広がっていたようである。今年度は文献調査の範囲をよりいっそう広げて、中国の女性神信仰の全体像を俯瞰できるようにしたい。また、昨年度文章化に至らなかった研究を、今年度は学術雑誌等に積極的に投稿していきたい。
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