2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌指向性多機能型カーボンナノチューブの創製と近赤外線を利用した癌免疫療法への展開
Project/Area Number |
11J02743
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
周 舒文 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボンナノチューブ / CpG DNA / 癌免疫療法 |
Research Abstract |
本年度は、主にカーボンナノチューブ(CNT)/ペプチド/CpG DNA三元複合体およびCNT/CpG DNA複合体の調製とその機能評価を行った。 最初に様々なペプチドを用いて水溶液中へのCNT分散能を検討し、CNTを最も安定に分散させたカチオン性ペプチドを用いて水溶液に分散可能なCNT/ペプチド複合体を作成した。次に、CNT/ペプチド複合体に免疫活性化能を付与するため、免疫活性化能を有するCpG DNAを静電的相互作用によりその表面に吸着させ、CNT/ペプチド/CpG DNA三元複合体の調製を試みた。N/P比を変えてCNT/ペプチド複合体とCpG DNAを混合しそのζ電位を測定した結果、CpG DNAの増加に伴ってそのζ電位は34.9mV(N/P=10)から-36.6mV(N/P=1)まで低下した。このζ電位の低下はCNT/ペプチド複合体表面へのCpG DNAの吸着によるものと考えられ、三元複合体の形成を示していると考えられた。CNT/CpG DNA複合体はCNTにCpG DNAを添加し、超音波処理を行うことにより調製した。 CpG DNA複合体の免疫活性化能はin vitro実験により評価した。CNT/ペプチド/CpG DNA三元複合体、CNT/CpG DNA複合体、およびNaked CpG DNAをRAW細胞に添加したところ、顕著なTNF-αの産生が認められた。この結果から、CNT/ペプチド/CpG DNA三元複合体およびCNT/CpG DNA複合体は、Naked CpG DNAと同様に免疫反応を活性化させることが示された。CNT/CpG DNA複合体についてはin vivoでの評価も行った。担癌マウスの腫瘍内に直接CNT/CpG DNA複合体を投与したところ、血中及び腫瘍組織内の炎症性サイトカインは未処置群などと比べて顕著に高い値を示した。 また、癌細胞への標的指向性を付与するために、CNT/CpG DNA/ペプチド三元複合体に抗HER2抗体の修飾を行った。システインを含むペプチドを用いてCNT/ペプチド複合体を調製し、これにマレイミド基を導入した抗HER2抗体をコンジュゲートさせた後、さらにCpG DNAを添加して三元複合体を形成させた。この抗体修飾三元複合体は癌細胞への指向性を有するため、効率的な癌免疫療法が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CNT/CpG DNA/抗体修飾自己組織化型ペプチド三元複合体の創製と近赤外線を利用した新規癌免疫治療への展開を目的とする。本年度では、主にCNT/CpG DNA複合体及びCNT/CpG DNA/ペプチド三元複合体の創製、またはこれらの免疫活性化能の評価を行った。創製した複合体の物理的性質については、ζ電位及び粒子径を測定した。免疫活性化能については、in vitro及びin vivoの検討で、優れた免疫活性化能を有していることが明らかとなった。さらに、抗HER2抗体の修飾により、癌指向性多機能型CNTの創製に成功した。以上より、本年度では、おおむねに研究が進展し、癌指向性多機能型CNTの創製により、近赤外線といった外部誘導に基づく免疫療法と温熱療法を併用した新たな癌免疫治療法への開拓が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度での成果に対して、創製したCNT/CpG DNA複合体及びCNT/CpG DNA/ペプチド三元複合体の癌抑制効果の評価を行う。担癌マウスの固形腫瘍内に、CNT/CpG DNA複合体及びCNT/CpG DNA/ペプチド三元複合体を直接投与後、近赤外線照射により抗腫瘍効果を担癌マウスの腫瘍体積と生存率を測定することで評価する。また、近赤外線の照射時間、投与doseなどの条件最適化をする。 また、体温の上昇により、免疫が活性化され易いと報告されているため、CNT/CpG DNA複合体及びCNT/CpG DNA/ペプチド三元複合体をマウスに投与後、近赤外線照射による体温の上昇によって、血中内のTh1型サイトカインの産生、免疫細胞の活性化などの違いについて検討を行う。さらに、抗HER2抗体を修飾した複合体を用いて、癌細胞に特異的に取り込まれるかどうかを確認する。最後に、創製した複合体の毒性について検討を行う。
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