2011 Fiscal Year Annual Research Report
超新星背景ニュートリノ検出のための中性子に感度のある水チェレンコフ光検出器の研究
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11J02758
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 俊彰 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超新星背景ニュートリノ / スーパーカミオカンデ / ガドリニウム |
Research Abstract |
超新星背景ニュートリノ(SRN)と呼ばれる過去の超新星爆発からのニュートリノを検出することで宇宙誕生から現在までの恒星進化の歴史のモデルを検証することができる。SRNの発見を目指し、ガドリニウム(Gd)を溶かした中性子に感度のある水チェレンコフ検出器の実証実験を行っている。今年度は200トン水チェレンコフ検出器に装着する240本の光電子増倍管(PMT)の事前較正、そしてPMTの検出情報を収集するためのシステムの構築を担当した。 PMTの事前較正の目的は以下の2つである。200トン実証機に装着するPMTの性能を調べ選定すること、そして印加電圧を調整し全てのPMTの出力電荷を均一にすることである。PMTの性能を調べるためLEDを用いて1光電子に対する感度を調べた。過去の実験から中性子を捕獲したGdからの信号は1光電子程度によるものが多いと予測されるのでこの測定は重要である。そしてキセノンフラッシュランプを用いて複数光電子数(約40光電子)の測定を行い、全てのPMTの出力電荷を約1%以内に収めた。これらの測定を踏まえてタンクに装着する240本のPMTの選定を行った。 データ収集システムは信号の読み出しエレクトロニクスにスーパーカミオカンデ実験で使用されていたATM(信号波高・時間記録回路)を用いて構築した。また実験室内の電磁ノイズが収集システムに影響を与えてしまう恐れがあったが、調査を行い問題ないことを示した。システムはほぼ完成しており、タンクにPMTを装着次第データ収集を開始できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
200トン実証機に光電子増倍管を設置する前段階の当初の課題である以下のことは完了している。光電子増倍管の事前較正、データ収集システムの構築。これによりタンク内に装着したPMTの基本的な信号の波高・時間を解析できる準備ができている。 さらに取得データを解析に適した形のファイルに変換するシステムも概ね開発が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の夏に200トン実証タンクに240本の光電子増倍管(PMT)の装着が行われる予定である。 PMT装着作業開始までに現在のシステムを改良し、収集されたデータを解析するためのオフラインシステムに事象再構成のプログラムを導入する。 PMT装着後に事前較正の値を基準にしてPMTの再較正を行う。200トン実証タンクにガドリニウム化合物水溶液を循環させた後に、人工中性子線源を用いた実証実験を行い、ガドリニウムによる中性子の捕獲効率を求める。 以上の実験によってガドリニウム入り水チェレンコフ検出器の超新星背景ニュートリノ検出に対する総合的な評価を行う。
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