2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
諏訪 僚太 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海洋酸性化 / 初期生活史 / ウニ類 / 高精度海水CO2濃度制御 / 環境影響評価 |
Research Abstract |
ウニから採取した配偶子を授精させ、230ppmから600ppmまでのCO2濃度条件の海水にプラスチック容器内にて3日間暴露した。暴露後のウニ幼生を回収し、顕微鏡下にて写真撮影及び画像解析による各部のサイズ測定行ったところ、230ppmと430ppmの2条件に曝したバフンウニ幼生では、全長・後腕長・体長はCO2濃度が高い430ppm条件においてより短くなるという、統計的に有意な変化がみられた。300、400、500、600ppmの4条件に曝したムラサキウニ幼生では、CO2濃度が高くなると全長と後腕長がより短くなる傾向がみられた。この結果は学術誌Marine Ecology誌に投稿した原著論文が2012年9月に受理され、平成24年9月には米国カリフォルニア州モントレーにて行われた国際会議'Third International Symposium on the Ocean in a High-CO2 World'において、ポスター形式での発表を行った。 また、これまでの研究で、酸性化条件下においてナマコ精子の運動性の低下を確認しており、この現象が細胞内pHの変化によるものであるとの仮説のもとに、容易に手に入るバフンウニ精子をpH蛍光試薬を用いて細胞内pHの変化を可視化及び数値化する検証実験系の確立を行った。 さらには、クシハダミドリイシの産卵期に配偶子を採取し、幼生まで発生させた後にヒドラ由来の神経ペプチドを用いて初期ポリプへ変態させた後に、600ppmと1000ppmに12時間毎に切り替わる日周変動条件に28日間暴露した結果、骨格の乾燥重量が600、800、600/1000ppmにおいて対照区の400ppmと比べ有意に減少した。この結果から、実験期間中の平均CO2濃度が同じであっても、濃度一定条件と日周変動条件で生体へ生じる影響が異なる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では将来予測される大気中CO2濃度上昇が海洋生物に及ぼす影響を正確に評価することを目的としており、本年度は現在の大気CO2濃度に近い低領域CO2濃度条件及び自然条件に近い日周変動を考慮したCO2濃度条件に伴う海洋酸性化の影響についてウニ幼生と稚サンゴを用いて評価した。前者については、得られた成果は国際誌Marine Ecologyへの投稿用論文として受理された。後者については日周変動条件を作成すると共に稚サンゴへの影響を評価できた。この他にもウニ精子への酸性化の影響の機序を調べるために、精子内のpH変化を視覚化及び数値化する手法の確立を進めており徐々に成果が出始めている。これらの進み具合を考慮すると本年度の研究計画の達成度は90%程度と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画はウニ幼生への海洋酸性化影響のメカニズムの解明とより自然条件に近いCO2濃度条件の作成にある。 前者についてはウニ精子内のpH変化とウニ幼生や貝類幼生の骨格や貝殻の表面構造や硬度の変化について調べることで研究を進めていきたい。後者については小型の海水用CO2センサーを用いて実際のウニ類の生息環境におけるCO2濃度を測定することでより自然条件に近い実験条件の作成し、これまでに開発を終えている影響査定のための室内水槽実験装置を用いてそのウニ類への影響を調べていきたい。論文発表や学会発表等の機会についてもより増やしていきたい。
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