2012 Fiscal Year Annual Research Report
マウス胚ノードにおけるカルシウムシグナルの解析と左右決定機構の解明
Project/Area Number |
11J02775
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
高尾 大輔 基礎生物学研究所, 時空間制御研究室, 特別研究員(PD)
|
Keywords | マウス / ノード / 左右非対称性 / カルシウム |
Research Abstract |
マウスの7.5日胚を培養しながらノードの細胞内カルシウムを可視化するための系を確立した。カルシウム感受性の蛍光色素を細胞に取り込ませ,二光子顕微鏡でノードの三次元タイムラプス蛍光像を取得した。この画像からカルシウムシグナルを抽出するアルゴリズムを開発し,画像解析ソフトImageJのマクロを作成した。これを用いて,ノードにおけるダイナミックなカルシウムシグナルの時空間分布を定量的に解析した。野生型・繊毛が運動能を失い左右軸がランダムになる変異体(iv/iv)・およびカルシウム透過性チャネルPKD2のノックアウトにより左右軸がうまく形成できなくなることが知られている胚を用いて,それぞれの胚においてノードのカルシウムシグナルの時空間分布がどのようになるのか解析を始めた。野生型の胚では,始めは一様に分布していたカルシウムシグナルが,ノードでの左右非対称な遺伝子発現が見られる時期になると,ノードの左側でより高頻度に観察された。iv/iv胚においては,左側もしくは右側で高頻度に観察される個体や,両側で同程度に観察される個体があり,平均するとカルシウムシグナル頻度は全ての発生ステージにおいて左右対称であった。PKD2ノックアウト胚では,ノードの両側において,野生型胚に比べてシグナル頻度が有意に低いという結果が得られた。これらのシグナルパターンはノードにおけるNoda1やCerl2などの発現パターンとの関連を示唆しており,ノードでのダイナミックなカルシウムシグナルが左右決定の初期のステップに関わっているという新しい仮説を提唱した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ノードでのカルシウムシグナルと胚の左右非対称性の関連を示唆するデータが得られ,当初の計画よりかなり早い段階で論文を発表した。これにより,さらに深く研究を進める見通しがたった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から繊毛のカルシウムチャネルを介したシグナル伝達が左右非対称性に重要であることが示唆された。このシグナル伝達機構をより詳細に調べる。そのために,培養細胞を用いるなど当初の計画にはなかったアプローチを導入する必要性が生じた。そこで,培養細胞を用いた繊毛研究を専門とする米国ミシガン大学のKristen J.Verhey研究室にて研究を行う。
|