Research Abstract |
代表者は高次元データにおける(1)平均構造のモデル選択基準および(2)精度行列(共分散行列の逆行列)の推定に関する研究を行った. 研究(1)について. これは, H24年度の研究で導出した平均構造のスパース推定法の問題点を解決するために行った. 前年度の提案手法により, 従来法よりも推定精度が向上し, 加えて, 意味のある平均構造を抽出することが可能になったが, 平均構造を「正確に」抽出するためにはデータの共分散構造にやや強い条件が必要になってしまった. その条件は, ある変数問に強い相関を持っようなデータを排除してしまうため, 実際のデータ解析の際に問題となる. そこで, 別方向からのアプローチとして, モデル選択規準を用いた方法を考えた. 選択規準の導出には, 精度行列の推定量が必要になるが, 高次元データにおいては, 典型的な標本共分散行列を用いることができない. その点に関しては, 高次元データにおいても計算可能でかつ理論的にも良い性質をもつGraphical Lasso型推定量を代わりに用いた. その後, 提案した選択規準の一致性を示し, その際に必要な十分条件は, 前述の条件よりも弱くなっていることが確認できた. 研究(2)について. 精度行列は, 研究(1)の問題や, 線形判別など様々な状況で現れるが, 前述のように典型的な方法が利用できないため, その推定法に大きな関心が寄せられている. 近年, Cai (2011)が推定精度の非常に良いスパース推定法を提案しているが, この方法は推定量の計算に時間がかかることに加え, スパース過ぎる解を返してしまう可能性がある. そこで代表者は, Vec-Half作用素を用いて問題を単なる線形回帰問題に落とし込み, その上でスパース推定触を構成した. これにより, 従来の高速な計算アルゴリズムがそのまま利用できることに加え, ペナルティ関数を変更することでデータのスパース性にも柔軟に対応できるようになった.
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