2011 Fiscal Year Annual Research Report
可撓性高分子との相溶ブレンドによるセルロースエステル誘導体材料の高機能化
Project/Area Number |
11J02809
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 和紀 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | セルロースエステル誘導体 / メタクリル酸メチル / 相溶ブレンド / 熱可塑化 / 配向複屈折 |
Research Abstract |
共に良好な光学物性を有するセルロースアセテート(CA)とメタクリル酸メチル(MMA)ユニットを,ポリマーブレンド法により分子レベルで複合化することで,熱成型が可能,且つ熱延伸処理後に配向複屈折が生じない新規セルロース系複合材料の創製を目指した。具体的には,セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とMMA含有ビニル共重合体とのポリマーブレンド法について検討し,CAPの側鎖組成ならびにビニル共重合体の共重合組成をパラメーターとすることで,熱・光学物性の制御を試みた。 まず,種々の側鎖組成を有するCAP試料の調製を,出発試料の選択,ならびに攻撃試薬と触媒量の調整により達成した。対成分ビニル共重合体には,セルロースエステルと良好な相溶性を示すN-ビニルピロリドンユニットを含むN-ビニルピロリドン-メタクリル酸メチルランダム共重合体(P(VP-co-MMA))を用い,溶液キャスト法により各種ブレンドフィルムを作製した。 熱分析による相溶性の評価,ならびにCAあるいはセルロースプロピオネート(CP)といった単一エステル系との比較より,1)CAPとP(VP-co-MMA)間の分子間水素結合,2)プロピオニル基の立体障害効果,3)ランダム共重合体の斥力効果,4)CAPの規則構造形成能等のバランスにより,CAP/P(VP-co-MMA)ブレンド系の相溶性が決定することが示された。特に,3)ならびに4)にはCAP系ならではの効果(異なる側鎖の混在効果)が含まれており,単一エステル系よりも相溶領域が拡大することが明らかとなった。 また,相溶ブレンドフィルムの一軸熱延伸に伴う分子配向挙動と複屈折についても評価を始めており,1)分子間相互作用の違いにより,分子配向挙動は大きく異なること,2)CAPの側鎖組成ならびにP(VP-co-MMA)の共重合組成を選択することで,フィルムの複屈折が制御し得ることを見出しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
種々の側鎖組成を有するCAP試料を作り分けるとともに,CAP/P(VP-co-MMA)ブレンド系の相溶性評価(相溶マップの作成)を終えている。さらに,相溶ブレンドフィルムの一軸熱延伸に伴う分子配向挙動と配向複屈折の評価についても手を付け始めており,交付申請書に記載した(A)ポリマーブレンド法による高機能化については,概ね順調に進展している。しかしながら,(B)グラフト共重合による熱可塑化については,CA幹鎖/MMA枝鎖の組成比やMMA枝密度,MMA枝鎖長といったパラメーターの振り分けが成功しておらず,それらが光学特性に及ぼす影響については,ほとんど進展していない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き,まずCAP/P(VP-co-MMA)相溶ブレンドフィルムの一軸熱延伸に伴う分子配向挙動と配向複屈折の評価を進める。また,今年度の研究により,CAP/P(VP-co-MMA)ブレンド系の相溶性にはCAPの規則構造のとりやすさ(結晶構造を形成するか否か)が寄与している可能性が示唆されたことから,広角X線回折測定による結晶化度の評価を新たに行う。グラフト共重合体については,出発試料や攻撃試薬,反応条件等について再考し,種々の側鎖組成を有するグラフト試料の作り分けを進める。試料調製が終わり次第,光学特性の解析に移る。
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