2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞における内在性TLRリガンドの同定とT細胞を標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
11J02842
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
七田 崇 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | サイトカイン / TLR / マクロファージ / 虚血性疾患 / 脳梗塞 / IL-23 / ペルオキシレドキシン / 抗体療法 |
Research Abstract |
我々は脳梗塞後の炎症をモデルにおいて、脳虚血早期に浸潤するマクロファージが産生するIL-23が、脳虚血遅延期に浸潤するγδΤ細胞からIL-17産生を誘導し梗塞層の拡大を招いていることを発見し報告した。このように早期の炎症性サイトカインの産生抑制は脳梗塞ばかりでなく多くの虚血性疾患の病態に関連することが明らかにされつつある。しかし無菌的な状況でマクロファージからの炎症性サイトカインの産生機序は不明である。本年度は脳組織において炎症を惹起させる脳内因子を同定する手法を確立し、実際にperoxiredoxin(Prx)familyタンパクを新規に同定した。まずマウスの脳抽出液を作製し、これを培養樹状細胞に添加すると樹状細胞が活性化されてIL-23やIL-1β、TNF-αなどの炎症性サイトカインを産生した。脳抽出液を分画することによって、およそ15~25kDaのタンパクが樹状細胞を活性化していることが判明したが、最終的に質量分析計を用いて脳抽出液中のタンパクを同定することにより、Prx familyタンパクが樹状細胞を強く活性化することを発見した。Prxは細菌から哺乳類まで幅広い生物に存在しており、哺乳類ではPrx1~6までの6つのsubtypeが存在する。このPrx familyタンパクが細胞死に伴って細胞外に放出されると、Toll-like receptor(TLR)2/4を介してマクロファージを活性化させる機能を持つことを確認した。さらにPrx familyタンパクそれぞれに対する中和抗体を作製して一過性脳虚血モデルマウス(脳梗塞モデル)に投与したところ、炎症細胞のサイトカイン発現が抑制され、梗塞体積や神経症状の改善効果が認められた。これらのことからPrxがマクロファージを活性化させる内因性のTLRアゴニストであることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画1年目にしてPrxの同定、抗体による梗塞抑制、TLR2/4を介したメカニズムなどを解明しすでに論文はNature Medicine誌にacceptされている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度途中で助教に就任し、学術振興会PDとしては最終年度のため記載なし。
|