2011 Fiscal Year Annual Research Report
発光イメージングを利用したDNA修復経路の破綻による神経症状発症機構の解明
Project/Area Number |
11J02843
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
落合 博 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 特別研究員(PD) (60640753)
|
Keywords | zinc-finger nucleases / 放射線 / ゲノム不安定性 / 小頭症 |
Research Abstract |
胎内で放射線被爆することにより,高頻度に小頭症を発症することが知られている。放射線はDNAの二重鎖切断(DSB)を誘導し,またDSB修復機構やゲノム安定性の維持に先天的な異常を持つ多くの患者において小頭症が認められることから,DSB修復機構やゲノム安定性の維持と小頭症には密接な関係があると考えられている。しかし、疾患モデル神経幹細胞が樹立されておらず小頭症の発症メカニズムは明らかになっていない。 本年度では,人工制限酵素zinc-finger nudease(ZFN)を利用した遺伝子改変システムの確立とそれを利用したヒト疾患モデル細胞株を作製する目的で,以下の通り研究を実施した。ZFNはDNA結合ドメインとDNA切断ドメインからなる人工タンパク質で,任意のDNA塩基配列領域へDSBを導入できる。DSBは細胞内で速やかに修復されるが,外来のターゲティングベクターとDSB周辺領域で相同組換え修復が起こることで,レポーター遺伝子が特定遺伝子座へと効率的に導入されることが知られている。そこで、ZFN作製システム(Ochiai et al,2010)を利用して,小頭症原因遺伝子の一つであるBUB1B遺伝子領域に標的を持つZFNを作製した。このZFN発現ベクターとターゲティングベクターをヒト骨肉腫細胞U2OSおよびヒト直腸結腸癌細胞HCT116に共導入したところ、それぞれの細胞系譜のいくつかのクローンで標的部位に外来遺伝子が挿入されていることを確認した。このことから、ZFNを利用することで、ヒト培養細胞において効率的に特定遺伝子領域に外来遺伝子を挿入することが可能であることがわかった。今後この技術を利用し、小頭症発症に関係する遺伝子を破壊したヒト疾患モデル神経幹細胞の作製を試みる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZFNの作製法は極めて煩雑であり、企業の受託作製以外での報告は一部の研究グループに限られている。しかし、当該研究者はZFN作製法をすでに確立しており、問題なく作製できた。また、ヒト培養細胞においてZFNを利用した効率的遺伝子ターゲティングを行うことに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ZFN技術を利用して小頭症発症に関わる遺伝子を破壊したヒト疾患モデル神経幹細胞の作製を試みる予定である。 電離放射線によって生じたDSBは、Mrell-Rad50-Nbs1(MRN)複合体によって認識され、引き続きATMキナーゼを中心としたDNA損傷シグナル経路を活性化する。当該研究者は作製予定のヒト疾患モデル神経幹細胞において放射線によるDNA損傷シグナル経路の活性化の程度を細胞レベルで定量化するために必要な、発光プローブを作製予定である。
|
Research Products
(2 results)