2012 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの意味から大人の意味へ:複数語の関係理解に基づく意味の再編成過程のモデル化
Project/Area Number |
11J02913
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐治 伸郎 慶應義塾大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 語意習得 / 語意の再編成 / 音象徴 / 言語普遍性 / 言語個別性 / 第一言語習得 / 第二言語習得 |
Research Abstract |
平成24年度の成果として,第一に,前年度までに研究計画・データ収集を行った第二言語習得における語意の使い分けに関する研究の成果が言語研究の国際誌であるScientific studies for readingに公刊された.第二に,研究計画に従い,第一言語習得における語意の再編成方略に関する研究についてデータ収集を開始した.具体的には,子どもが既に知っている動詞の参照動作に対して,新たに名付けが行1われた時,どのように既知語の意味を変化させるかを理解実験により調査した.結果,子どもは「持つ」のような最初から広い意味範囲を持つ語については新しい語意を既知語の下位範疇の語意として捉え,また「背負う」の様な狭い意味範囲を持つ語については新しい語意を既知語の同義語として捉えることを明らかにした.第三に,オノマトペのような形式と意味の間に有縁性を保つ語彙の場合,どのような語意の体系的特徴を持っているかを前年度より引き続き調査した.具体的には音象徴における類像的な音と意味との結びつきのうち,どの部分が言語個別的でどの部分が言語普遍的であるのかを日英母語話者に対する産出実験を通し検証した.今年度は特に動作様態に対する意味評定の結果と,音象徴語の音素性との関係を重点的に分析した結果,オノマトペの言語個別性は日英各言語の音韻的特徴に依存する部分があることを明らかにした.第四に,音象徴語が,子どもの言語獲得においてどのような影響を与えうるか,養育者のオノマトペ利用に着目してその運用様態を実験的に調査した.実験では2歳児,3歳児の子どもとその養育者に様々な動画を見せ,養育者に動画の内容を子どもに対し話してもらった.結果,養育者は2歳の子どもにはよりオノマトペを多く使い,更に外部世界の事象に合わせた類像的な使い方をすること,3歳の子どもにはオノマトペを特に文中で,動詞の意味をより具体的にするために副詞的に用いることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は前年度収集した第二言語習得のデータが論文として公刊されたのに加え,研究計画通りに第一言語習得の実験計画・データ収集を進めることができた.また音象徴に関する諸研究も一部論文として成文され,これは研究計画以上の進展であった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の推進方策としては,平成24年度に収集・分析した成果の公開を第一に考える.特に第一言語習得における語意の再編成方略の変化の推移については,今年度中に論文化を目指す.また,音象徴の言語個別性及び言語不変性の研究成果については既に研究成果がまとまっているために,これも早期の公刊を目指す. またデータ収集に関しては,第一言語習得について,子どもを対象にし,既知の語意知識が新たな語意知識の推論方略に与える影響を調査する実験について,春学期にデザイン,秋学期以降のデータ収集を目指す.
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Research Products
(4 results)