2011 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖期における海鳥の帰島時刻および帰島開始時刻に関わる制約
Project/Area Number |
11J02916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 こずえ 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員DC2
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Keywords | ナビゲーション / データロガー / オオミズナギドリ / バイオロギング |
Research Abstract |
本研究の目的は、外洋性鳥類であるオオミズナギドリが餌場である海から営巣地である島に戻り始めるタイミングや島に到着するタイミングが、どのような要因に左右されているかを明らかにすることである。 岩手県下閉伊郡山田町船越大島にあるオオミズナギドリの繁殖地で、育雛中の親鳥20羽にGPSデータロガー(Technosmart社製、イタリア)を装着した。このロガーは各時点での緯度経度を誤差数mの精度で記録する。装着から約1週間後に回収作業を開始し、供試個体の再捕獲とロガーの回収を行った。これにより、採餌トリップ中の経路データを取得することができた。実験で得られたデータは現在解析中で、自然環境下での親鳥の帰島行動の特性を明らかにしていくことを目指している。 さらに、親鳥が島に戻る適切なタイミングを知る手がかりやナビゲーションメカニズムを明らかにすることを目的に、GPSロガーを装着した親鳥15羽を人為的に島から約130km離れた沖まで船で運び、放鳥する実験を行った。時刻が帰島行動に与える影響を調べるため、放鳥時刻は日中、日没時刻、夜間の3パターン設定した。放鳥後は島で待機し、戻ってきた放鳥個体を再捕獲してロガーを回収した。強制的に条件を変えた場合の帰島経路データを時間・空間両方の観点から解析することで、野生の海鳥の帰島メカニズムの解明を目指す。 これまでの実験で得られた移動経路データから、オオミズナギドリが日没後数時間以内に島へ到着できるよう、島へ戻り始めるタイミングを島までの距離に応じて調節していることが明らかとなった。このような移動タイミングの先見的な調整は、人間以外の動物でこれまでに報告されたことがなかった。この知見を論文にまとめ、国際学術誌Animal Behaviourに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年3月に起きた震災の影響で、岩手県にある実験地での調査の実施が危ぶまれたが、地元の漁師さんや共同研究者の協力により、予定していた実験をすべて遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も親鳥の採餌トリップ中の移動経路データを取得するとともに、昨年とは異なる地点からの放鳥実験を実施する。これまでに取得した全データを総合的に解析し、本研究課題の成果を学術論文にまとめ、発表する。
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[Presentation] 動物装着型GPSを用いたオオミズナギドリの移動パターンの地域間比較2011
Author(s)
依田憲, Carlos Zavalaga, 阿部倫也, 松本祥子, 佐藤克文, 塩見こずえ, 山本麻希, 綿貫豊, 渡辺伸一, 飯田知彦, 大下誠二, 河邊玲
Organizer
Animal 2011
Place of Presentation
慶応大学(東京都)
Year and Date
2011-09-09
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