2011 Fiscal Year Annual Research Report
ファイトプラズマの宿主制御に関わる分泌タンパク質の機能解析と新規防除戦略の構築
Project/Area Number |
11J02951
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 杏子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ファイトプラズマ / Loop-mediated isothermal amplification |
Research Abstract |
ファイトプラズマは、昆虫伝搬性の植物病原細菌の一群であり、重要作物を含む700種以上の植物に病気を引き起こして世界中で農業生産に甚大な被害を与える。ファイトプラズマ病は治療法や診断法が確立されていない難防除病害のひとつであり、本研究ではその防除法確立を目的とした基礎研究を行う。本年度は、検疫などを行う上で有用なファイトプラズマ病の簡易診断法を開発した。従来、ファイトプラズマの検出には専門的な技術や高額な機器を必要とし、一部の研究機関で実施されているのみであった。そこで機器を必要としない簡易な遺伝子診断技術であるLoop-mediated isothermal Amplification(LAMP)法を用いたファイトプラズマ検出法を開発した。最大のファイトプラズマ種であるCa.P.asterisをふくむ二種のファイトプラズマについて、本法による検出を試みたところ、種特異的な検出が可能であった。本法は従来の遺伝子診断法と比較して、検出感度が10倍以上高く、さらに所要時間も2時間程度少ない。本検出法は日本に発生するファイトプラズマ病12種について適用できることが確かめられており、ファイトプラズマ病の診断に有用であると考えられる。 また、本研究ではファイトプラズマのゲノム上にコードされる数十の分泌タンパク質が、ファイトプラズマの感染拡大に寄与するという仮説のもと、感染植物における分泌タンパク質の機能を解析する。ファイトプラズマは植物のみでなく伝搬昆虫にも感染し、二つの宿主環境に応じて遺伝子発現を制御することが示唆されている。そこで、植物感染時に特異的に発現するファイトプラズマの分泌タンパク質遺伝子を解明するため、ファイトプラズマ遺伝子のマイクロアレイ解析を行った。その結果、いくつかの分泌タンパク質は植物感染時に有意に多く発現しており、植物における病原性に関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マイクロアレイ解析に基づく遺伝子発現パターンの解析により植物内で機能する分泌タンパク質遺伝子を特定した。これらの分泌タンパク質について、予定通り機能解析を進めている。さらに、本年度はファイトプラズマを防除する上で重要な診断法の改善を試みた。その結果、従来よりも簡便・迅速・高感度な診断技術を開発した。この技術はすでに診断キットの形で実用化されており、これは当初期待していた以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、分泌タンパク質遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナに形質転換し、それぞれの分泌タンパク質の植物における機能を解析する。特に、ファイトプラズマの引き起こす病徴のうち特に特徴的である花の奇形や、萎縮叢生症状に着目し、分泌タンパク質との関連について解析を行う。また植物内での機能が明らかになった分泌タンパク質については、作用メカニズムを解析する。具体的には、植物における作用場所を明らかにし、標的分子を絞り込むため、分泌タンパク質の局在解析などを行う予定である。
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