2012 Fiscal Year Annual Research Report
ファイトプラズマの宿主制御に関わる分泌タンパク質の機能解析と新規防除戦略の構築
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11J02951
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 杏子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ファイトプラズマ / TENGU / 分泌タンパク質 |
Research Abstract |
ファイトプラズマは昆虫によって伝搬され、農作物に病気を引き起こす細菌である。これまでの知見からファイトプラズマは、宿主植物や媒介昆虫の性状を変えることで、感染拡大を有利にすると推測されているが、そのメカニズムはほとんど解明されていない。本研究ではファイトプラズマによる宿主制御にファイトプラズマが分泌する機能未知のタンパク質が関与するとの仮定のもと、ファイトプラズマの持つ分泌タンパク質から宿主制御因子を探索する。また、同定された宿主制御因子について、その作用メカニズムを明らかにし、新規防除戦略の構築を目指す。 平成24年度には、前年度までに宿主の形態形成に影響する事が分かっている分泌タンパク質TENGUの機能解析を行った[学会発表]。TENGUは全長38アミノ酸からなる低分子のタンパク質であるが、このうちたった11アミノ酸からなる部分が、植物に形態異常を誘導する機能を持つことが明らかとなった。また、多系統のファイトプラズマからTENGUのクローニングを試み、TENGUがファイトプラズマの一部で保存された病原性因子であることを明らかにした。さらに、TENGUに加えて、植物の形態形成に影響する新たな分泌タンパク質を見いだした。これらの因子群については、平成25年度に予定していた下流で影響される宿主因子群の解析についても予定を前倒しにして進めている。また、24年度には各分泌タンパク質発現シロイヌナズナを用いて、ファイトプラズマに対する植物の抵抗性を抑え、ファイトプラズマ増殖を有利にする分泌タンパク質の探索を行った。まずはコントロールとして非形質転換体のシロイヌナズナを用いて、ファイトプラズマ増殖を経時的、かつ定量的に解析するための実験系を確立した。現在、植物の抵抗性を抑制する分泌タンパク質形質転換体について植物の防御応答を抑制するか、検定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、前年度までに見いだされた形態異常誘導因子の機能解析を行い、来年度に予定している遺伝子発現変動解析の予備実験を進めている。この点で、当初の計画以上に進展しているといえる。また本年度は計画通り、増殖を促進する因子のスクリーニングも行った。現時点では、ファイトプラズマ増殖促進因子の同定には至っておらず、やや計画に遅れは有るものの、スクリーニング作業が順調に進んでいるところである。以上の二点から、計画全体としては概ね順調な進行であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで宿主の形態形成に影響する複数のタンパク質を見いだしており、その形態形成制御メカニズムについて知見を得るため、分泌タンパク質形質転換体と非形質転換体の遺伝子発現の変動を、マイクロアレイ解析によって網羅的に調べる。その結果宿主形態形成に関与すると考えられる遺伝子群や代謝経路を推定する。実際に変動する因子群と形態以上の誘導に関与しているかを、分泌タンパク質発現体と下流因子欠損変異体とを掛け合わせる事で検証し、ファイトプラズマによる形態異常の誘導メカニズムを解明する。さらに、本年度行っていた増殖促進因子のスクリーニングを継続しこちらについても因子の単離と下流経路の推定を行う。
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