Research Abstract |
非鉛圧電セラミックスの代表として, 優れた圧電特性と温度特性を持つ(K, Na) NbO_3(以下KNN)セラミックスに注目した. 通常, 圧電セラミックスは固相反応法を用いて原料となるセラミックス粉末を得る. しかし, KNNの合成で, 固相反応法を用いて高品質なセラミックス粉末を得ることは困難である. まず, 原料粉末の炭酸カリウムには潮解性があるため, 精密な秤量が困難である. また, 仮焼きの際にNaとKが蒸発し, 合成後の粉末中のNbと(K+Na)の組成が1:1にならないため, 得られる焼結体の誘電損失が増加する. さらに, ボールミル処理では, 毎回20時間以上かかること, 不純物が混入することが問題である. そこで, 水熱合成法を用いて粉末の合成を行うことで, それらの問題を解決できる. 水熱合成法はイオン反応を利用しており, 最終的に得られるKNbO_3中のNbとKの組成比は自動的に1:1となる. さらに, 水溶液中のイオン反応において微細な粉末を得ることができることも報告されている. 本研究では高品質粉末が合成できる水熱合成法を用いて, KNN系セラミックスの合成実験を行った. また, 合成した材料をハイドロホンとしての応用も行った. 水熱合成法によって得たKNbO_3, 粉末とNaNbO_3粉末にLiNbO_3を粉砕することで得られたLiNbO_3粉末を添加し, 圧電特性の制御を行った. その結果, (Li, K, Na) NbO_3セラミックスは高い圧電定数d_<33>=203pC/Nを示し, キュリー点は482℃であった. 水熱合成法による(K_<0.48>Na_<O. 52>)NbO_3セラミックス焼結体は密度98%以上の高密度焼結体が得られ , 優れた圧電出力定数g_<33>=28.8×10^<-3>Vm/Nを示し, キュリー点温度がTc>420℃と高く, 温度に対する動作範囲が広いこと, Qm値が低いために広範囲の周波数での応答が滑らかなソフトな材料であった. (Ko_<48>Nao_<52>)NbO_3をハイドロホンとして応用すると, PZTのハイドロホンと互換性のある出力が得られることが分かった. また, ハイドロホンとして応用できたことで, ソナーのようなトランスデューサや, 医療用超音波診断装置などに用いることができると期待できる.
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