2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02986
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
進矢 正宏 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 反射 / 節電図 / 事前知識 / ワーキングメモリ / 階段ステッピング / 歩行 / 国際研究者交流 / カナダ |
Research Abstract |
本研究は、従来は自動的・無意識的と思われていた歩行に関わる姿勢制御活動において、事前知識という高次脳機能が果たす役割を明らかにすることを最終的な目的とするものである。健常成人男性11名を被験者とし、歩行中いつ・どのような外乱が加えられるかを教示することにより、外乱に対する時間的・空間的事前知識を与えた上で、誘発される反射的筋活動を計測した。その結果、外乱のタイミングに関する事前知識を有していた場合、内側腓腹筋の筋活動開始までの時間が短縮する(タイミング知識なし:72ms、タイミング知識あり:57ms)というデータが得られた。この結果は、従来は自動的な結びつきが非常に強いため、潜時は変化しないと思われてきた反射的筋活動も、事前知識という高度な脳活動の影響を受けている可能性を示唆しており、非常に画期的である。 ロコモーション課題中のワーキングメモリの役割について、当初は実験動物を対象とした研究を行う予定であったが、小型電極を用いた計測が予定通りには進まなかったため、ヒトを対象とした行動学的実験に切り替えた。その結果、通常2~3秒で失われる階段の高さに関する短期記憶が、事前のステッピング経験により5~10秒の間保持されることを示唆する有力なデータを得た。ここで用いた方法は、非侵襲的である上、教示から計測終了までが15分以内で終わるため、認知機能と運動機能に関する簡便な臨床的な応用も可能であると考えられる。現在、軽度認知機能障害患者を対象とした研究を続けており、今後の展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験動物を対象とした実験は上手くいかなかったものの、予定していた通り、国内およびカナダでの実験を行い、来年度の発表が可能であると思われる質のデータを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度以降はヒトを対象とした研究に集中する。事前知識が反射的筋活動に与える影響について、大きな音でプローブするStartReactという手法を用いて検証する。23年度に得たデータを国内外の学会に発表し、そこで得られたフィードバックを参考に学術誌に投稿する予定である。
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