2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J02986
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
進矢 正宏 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 反射 / 事前知識 / コンテキスト / 姿勢制御 / 運動学習 |
Research Abstract |
本研究は、従来は自動的・無意識的と思われていた歩行に関わる姿勢制御活動において、事前知識という高次脳機能が果たす役割を明らかにすることを目的とした。前年度までに得られた、外乱のタイミングに関する事前知識を有していた場合に内側腓腹筋の筋活動開始までの時間が短縮する、という成果について国際学術会議(ECSS2012)にて口頭での発表を行った。また、通常2~3秒で失われる階段の高さに関する短期記憶が事前のステッピング経験により5~10秒の間保持される、という成果についてExp Brain Res誌に論文を発表することができた。 実験実施計画では、「外乱に対する反射的筋活動は事前知識を踏まえた上でプレプログラムされている」という仮説を検証するため、国立身体障碍者リハビリセンター(所沢市)トレッドミルを用いた行動学的実験を年度前半に行う予定であったが、トレッドミルの故障により予定通りの実施はできなかった。そこで、肘関節に外乱トルクを発生させる装置を用いた事前知識が反射や反応時間に与える影響を調べる実験を行った。その結果、通常は250ms程度必要な視覚刺激に対する選択反応時間が、視覚刺激と同時に肘伸展外乱を与えると120ms程度まで短縮することが明らかとなった。また、立位中の異なるコンテキストで行われた姿勢制御問での運動学習機構について調べる実験、も行った。この結果、腕を前方に拳上する直前に行われる無意識的な後ろ方向への姿勢制御と、意図的に行う後ろ方向への姿勢制御では、全く異なる運動学習機構が関与していることを示唆するデータが得られた。この、異なるコンテキストで行われる類似した姿勢制御タスク間での運動学習機構については、来年度以降も研究を続けている予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に実施した研究の成果を論文および国際学会における口頭発表で発表することができた。また、機材の故障により予定通りの実験ではなかったものの、新たな実験を発案・実施することができた上、それを発展させることにより来年度以降の成果が期待できるため。 前年度に引き続き、異なるコンテキストで行われる類似した姿勢制御タスク間での運動学習機構について研究を進める。実験は、東京大学総合文化研究科(駒場キャンパス)および教育学研究科(本郷キャンパス)にて行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究にあたっては、姿勢制御機構に詳しい受入研究者に加えて、運動学習機構に詳しい外部の研究者の指導も受けつつ行う予定である。
|