2011 Fiscal Year Annual Research Report
不応性貧血の病態解明を目的とした赤芽球分化成熟誘導機構の解明
Project/Area Number |
11J02996
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 朋子 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤血球 / 胎仔肝臓 / 脱核 / 終末期分化成熟 / 不応性貧血 |
Research Abstract |
不性貧血は赤血球の分化成熟過程で脱核障害および終末期赤血球分化異常が発生し、赤五球の量的・質的異常により貧血症状を呈する病態だが、その病因分子機構は未解明である。正常および異常赤血球分化・成熟制御機構やその分子基盤を明らかにすることで、不応性貧血の改善につながる新規治療法の開発が期待できる。 初年度(平成23年度)は正常終末期赤血球造血に焦点を絞り、その脱核および分化成熟制御分子の探索を行った。具体的には、赤血球造血が盛んな胎仔肝臓をGata1-GFPトランスジェニックマウスより採取し、(1)終末期Ter119^+赤血球の詳細な分画化 (2)分画化細胞の特性解析 (3)DNAマイクロアレイ法による分画化細胞の網羅的発現解析を行った。 結果、意義、重要性;(1)GFP発現(Gata1発現を反映)及び核染色マーカーXの組み合わせにより、Flowcytometry法で終末期Ter119^+赤血球(Sca-1^-c-Kit^-CD71^-Ter119^+)を更に詳細に3群(A; Ter119+GFP+X+,B; Ter119+GFP+X-,C; Ter119+GFP-X-)へ分画化することに成功した。(2)終末期赤血球で発現が報告されているβ-major,β-minor,Gata1,K1f1等の遺伝子発現解析により、A,B,C間において発現パターンに多様性が認められた。また免疫抗体染色法ではβ-globinタンパク質の発現パターンに差が認められた。更に形態学的解析(メイギムザ染色、ニューメチレンブルー染色、電子顕微鏡観察)の結果、細胞群Aは正染性赤芽球、Bは網状赤血球、Cは成熟赤血球を主に含む事が認められた。本結果は、終末期赤血球同定をTer119抗原のみに依存してきた既存の同定法を改善させた点で大変重要である。生体内では正染性赤芽球から網状赤血球への分化段階で脱核、分化成熟が起きることから、これらの細胞間での網羅的な遺伝子発現解析により、脱核および分化成熟制御に関与する新規分子の探索が期待できた。(3)細胞群AとBを用いたDNAマイクロアレイ解析、in silico解析の結果、AからBで発現が亢進する分子、AからBで発現が低下する分子を20個ずつ同定した。現在、候補分子をさらに絞り機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、マイクロアレイ実験を行い、データベース構築を行えた為。 また候補遺伝子の機能解析実験まで着手できた為。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目は候補遺伝子のin vitro能解析(機能獲得実験、機能欠失実験)に加え、in vivo解析の準備を行う。 3年度目はin vivo解析をマウスで行うとともに、不応性貧血患者のサンプルを用いた解析を行い、健常人と比較検討を行う。
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Research Products
(9 results)