2011 Fiscal Year Annual Research Report
前周期遷移金属低原子価の発生法と低原子価金属の特性を活かした触媒反応の開発
Project/Area Number |
11J03002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齊藤 輝彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化還元活性な配位子 / タンタル / 炭素-塩素結合活性化 |
Research Abstract |
これまでの遷移金属錯体を用いた多電子移動反応ではその反応性が中心金属の酸化還元電位に依存してしまい、反応によって用いることのできる金属種には制限がありました。申請者は有機物の酸化還元挙動に注目し、その酸化還元挙動を配位子として用いることで柔軟な酸化還元挙動を示す金属錯体の合成並びに反応性の検討を行ってきました。 当研究室で開発された有機ケイ素還元剤を用いて酸化還元電位の異なるα-ジイミン配位子を有するタンタル錯体の合成を行いました。得られた錯体はX線結晶構造解析などの各種分光法を用いて行いてその物性を詳細に同定しています。得られたタンタル錯体の電気化学測定を行ったところ配位子の酸化還元挙動に由来する可逆な酸化還元波を観測し、配位子の酸化還元電位を変化させることで錯体の酸化還元電位が大きく異なることを見出しました。この結果は中心金属周りの立体環境を変化させず、配位子の酸化還元を変化させるだけで反応性を大きく変化させることができる可能性を示唆しています。実際に、得られた錯体が反応中間体となる反応として炭素-塩素結合活性化反を試みたところ、配位子の酸化還元電位の違いによって反応機構が大きく異なることを見いだしました。今年度の研究結果はアメリカの化学雑誌であるJournal of the American Chemical Societyで報告し高い評価を得ています。また有機金属化学討論会、錯体化学討論会において申請者の研究の将来性が期待されポスター賞を受賞しました。このことは申請者の研究が学術的に高い評価を得ていることを示しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は配位子の酸化還元電位の違いによって錯体の物性を詳細に解明し、また、反応性が大きく異なることを見出しています。これらの実験結果を得たことから、研究目的である前周期遷移金属を用いた電子移動反応の開発に大きな進展があったといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の中に炭素ラジカルの発生による精密なラジカル重合反応の開発を挙げていましたが、中心金属のタンタルの性質からタンタル-塩素結合の反応性が乏しく、触媒反応に展開できる可能性が低いという研究結果を得ています。このことから比較的金属-塩素結合の反応性の高いニオブを用いて触媒反応への展開を試みる予定です。
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Research Products
(6 results)