2012 Fiscal Year Annual Research Report
前周期遷移金属低原子価の発生法と低原子価金属の特性を活かした触媒反応の開発
Project/Area Number |
11J03002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齊藤 輝彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化還元活性な配位子 / タンタル / 炭素-塩素結合活性化 / 窒素固定化反応 |
Research Abstract |
昨年度まで、酸化還元活性なα-ジイミン配位子を有するタンタル錯体の合成に関する研究を中心に行いその研究成果はアメリカの化学雑誌であるJournal of the American Chemical Societyで報告しました。今年度は得られたタンタル錯体を触媒として応用するため、配位子の酸化還元挙動を用いた脱ハロゲン化反応の開発に着手しました。得られたタンタル錯体が配位子の酸化反応を伴い炭素ハロゲン結合を活性化できるという点に着目し、還元剤および水素源としても働く有機ケイ素還元剤存在下で炭素ハロゲン結合の活性化を行ったところ、触媒的脱ハロゲン化反応が進行することを明らかにしました。またアメリカ化学会が主催するACSミーティングに参加しその研究成果の一部を発表しました。さらに、学会のあとにアメリカのいくつかの研究室を訪問し、教授とディスカッションを行い、触媒反応への展開について議論を交わしました。 高活性な低原子価タンタル種を用いた窒素一窒素多重結合の活性化反応の検討も行いました。当研究室で開発された有機ケイ素還元剤を用いて発生させた低原子価タンタル種に対してアジン化合物を反応させたところ窒素-窒素単結合が還元的に切断されイミニル錯体が生成することを明らかにしました。またアゾベンゼン存在下で五塩化タンタルを還元したところ窒素一窒素2重結合が切断されイミドタンタル錯体が生成することを見出しました。アゾ化合物やアジン化合物の窒素一窒素多重結合の活性化反応は窒素固定化反応の重要な素反応として考えられるため重要な研究テーマです。これらの結果は日本化学会が主催する春季年会において発表しました。 またさらに強力な還元力を有する有機ケイ素還元剤の合成にも成功しており、それを用いた触媒反応、窒素固定化反応を検討しているところです。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は当初目的としていた低原子価タンタル種を用いた窒素一窒素多重結合の活性化反応に成功しており十分に計画が進展している。また強力な有機ケイ素還元剤の合成に成功し、さまざまな前周期遷移金属を還元できるため窒素固定化反応を達成するために大きな進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は脱ハロゲン化反応に特化して研究を続けていたが、前周期遷移金属が基質の官能基に不安定であるため基質一般性が広がらないことが分かった。そのため、脱ハロゲン化反応にこだわらずラジカル付加反応などの様々な触媒反応への応用を検討する予定である。
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