2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J03004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仙波 一彦 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銅触媒 / アルキン / 部分還元 / ヒドロホウ素化 |
Research Abstract |
私は本年度、新規銅触媒を用いた不飽和結合の還元反応の開発に取り組み、アルキンのアルケンへの部分還元反応、非対称内部アルキンの位置選択的ヒドロホウ素化反応、1,3-ジエンおよび1,2-ジエンの高位置選択的ヒドロホウ素化反応を見出した。アルキンのアルケンへの高選択的な部分還元反応は有機合成化学上、重要な反応のひとつであり、これまでに様々な不均一および均一系触媒が開発されている。その中でも最も広く用いられる触媒の一つとしてLindlar触媒があげられるが、Lindlar触媒もアルカンへの全還元の問題、二重結合の異性化、再現性の問題を抱えている。そのため今なお今なお有効な触媒の開発は必要である。一方で銅触媒を用いた例も数例報告されているが、それらはいずれも基質であるアルキンに対して過剰の銅を用いなければならなく、未だ触媒量の銅を用いた反応は開発されていない。本研究では反応の触媒化を検討し、その結果かさ高い配位子を用いることで反応が効率よく触媒的に進行することを見出した。さらに上で述べたLindlar触媒に見られた問題は全く見られず、非常に有効な系であり、医薬中間体などの合成への応用も期待できる。アルキンのヒドロホウ素化反応は生成物として様々な官能基に変換可能なビニルホウ素化合物得られるため有用な反応である。一般的にヒドロホウ素化反応は無触媒で進行するが、異なる位置選択性を発現させるために遷移金属触媒もしばしば用いられる。末端アルキンのヒドロホウ素化反応は広く開発されているが、一方で非対称内部アルキンのヒドロホウ素化反応はその位置選択性の制御の難しさから開発は遅れていた。私はアルキンの部分還元において反応機構に関する詳細な検討を行った結果、活性種である銅ヒドリドが非対称アルキンに対して配向基の効果によって高い位置選択性で付加し、対応するビニル銅を与えることを見出した。この知見をもとに位置選択的なヒドロホウ素化反応に成功した。本反応において銅ヒドリドとボリル銅という異なる活性種を使い分けることによって相補的な位置選択性の生成物を得ることが可能である。さらに本触媒系を他の不飽和成分であるアレンや1,3-ジエンに応用したところ、適切な配位子を用いることで一つの基質から三つの生成物が得られることを見出した。さらに、同様の触媒系がシリル銅を活性種として用いたアレンのヒドロシリル化反応にも適応可能であり、この場合も一つの基質から三つの生成物を得ることに成功した。このように本コンセプトは位置選択的なヒドロメタル化反応に有効であり今後更なる発展を期待することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
銅触媒を用いたアルデヒド共存下におけるケトンの不斉ヒドロシリル化反応について検討を行う過程で申請者は適切な配位子を有する銅ヒドリドがアルキンに効率良く挿入することを見出した。そこから発生するビニル銅を用いて銅触媒を用いたアルキンの部分還元反応、ヒドロカルボキシル化反応およびヒドロホウ素化反応の開発に成功した。銅ヒドリドはこれまで分極の大きな多重結合カルボニル化合物やマイケルアクセプターの還元に広く用いられているが、その一方で比較的分極の小さな多重結合であるアルキンなどにはほとんど適用されていなかった。そのため本研究を契機に今後銅ヒドリドを用いた反応のさらなる発展が期待でき、本研究の成果は大きな意味を持つと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において銅触媒を用いたアルキンの還元的修飾反応が進行することを見出した。今後はハロゲン化アルキルなどの他の求電子剤を用いてさらなる反応の開発を目指す。さらにヒドロホウ素化反応においては銅ヒドリドとボリル銅という異なる活性種を使い分けることで相補的な位置選択性のヒドロホウ素化生成物を作り分けることができることを見出した。このように活性種を使い分けることはこれまでに広く用いられるロジウム触媒やパラジウム触媒ではヒドロホウ素の酸化的付加を経由するために困難であると考えられ銅触媒に特徴的な反応であると言える。そのため本コンセプトを他の不飽和成分や他のヒドロメタル化反応に用いることによってさらなる位置選択的なヒドロメタル化反応の開発が期待できる。そんため今後は本コンセプトを用いたさらなるヒドロメタル化反応の開発を目指す。
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Research Products
(6 results)