2011 Fiscal Year Annual Research Report
TEMPO酸化セルロースナノファイバーの表面化学改質
Project/Area Number |
11J03027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤澤 秀次 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セルロース / TEMPO触媒酸化 / 複合材料 / ポリスチレン |
Research Abstract |
近年、循環型社会の構築へ向け、地球上に最も豊富に存在する植物資源であるセルロースを用いた研究が必須となっている。特に、環境調和性の高いTEMPO触媒酸化によって得られたTEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下TOCN)は、極微なファイバー径(4nm)かつ高アスペクト比、高結晶弾性率(145GPa)というすぐれた物性を有するためその質的、量的利用の拡大が必須である。本研究はセルロース由来ナノファイバーをナノ材料として利用する先駆的研究であり、現在その優れた物性を生かした新規材料開発を行っている。これまでに、TOCNを汎用ポリマーであるポリスチレンに少量添加することで、ポリスチレン/TOCN複合材料を調製し、ポリスチレンの材料物性の向上を実現した。得られた複合材料は優れた熱寸法安定性を示した。特に、ガラス転移温度以上において、熱膨張率を4000分の1以下に低下させることに成功した。TOCNの添加により、ポリスチレンの弾性率及び強度が増加した。また、複合材料の動的粘弾性測定を行ったところ、わずか0.5%のTOCN添加で、150℃における弾性率が10倍以上に増加した。さらに10%のTOCN添加したところ、150℃における弾性率が約2600倍に増加した。これは、セルロースが極めて優れた補強効果を持つことを示唆しており、ポリマーの高強度、高耐熱性及び軽量化による輸送コスト削減が期待でき、利用展開が期待できる。 このように、TOCNを補強材料として用いた複合材料は、極めて透明で、優れた強度、弾性率、熱寸法安定性を示した。これら補強効果はこれまで報告されている補強材料と比べても優れたものであり、前述の優れた物性を有するTOCNならではのものであると言える。これら結果は、TOCNが優れた補強材料としての利用できることを示しており、再生産可能なセルロースの材料が大いに期待できるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、バイオマス由来材料であるTOCNを用いて、汎用高分子であるポリスチレンとの複合化に成功した。TOCNはこれまで報告されているセルロース材料よりも優れた補強効果を示した。本手法はTOCNの表面化学改質を行うことによって、初めて実現した材料であり、高い新規性を有したものである。さらに、本表面化学改質はセルロース結晶の構造を損なわないものであり、これまで報告されているセルロースの表面化学改質と比較しても、非常に独自性に優れた手法であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の達成に加え、新たにTOCN表面選択的に機能性官能基を高密度グラフト化する手法を確立した。本手法を用いることにより、TOCNとこれまで複合化が困難であったポリマー材料とのナノ複合化が期待できる。今後は、用途拡大が期待されている生分解性ポリマーであるポリ乳酸との複合化を行うことで、環境調和性に優れた新規バイオ系複合材料の調製を行う。得られた複合材料に対して、力学特性、光学特性評価に加え、TOCNの結晶核材効果についても検討する。
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Research Products
(10 results)