2012 Fiscal Year Annual Research Report
TEMPO酸化セルロースナノファイバーの表面化学改質
Project/Area Number |
11J03027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤澤 秀次 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セルロース / TEMPO触媒酸化 / 複合材料 / ポリ乳酸 |
Research Abstract |
近年、循環型社会の構築へ向け、地球上に最も豊富に存在する植物資源であるセルロースを用いた研究が必須となっている。特に、環境調和性の高いTEMPO触媒酸化によって得られたTEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下TOCN)は、極微なファイバー径(~3mm)かつ高アスペクト比、高結晶弾性率(145GPa)というすぐれた物性を有するためその質的、量的利用の拡大が必須である。本研究はセルロース由来ナノファイバーをナノ材料として利用する先駆的研究であり、現在その優れた物性を生かした新規材料開発を行っている。これまでに、表面を化学修飾したTOCNを生分解性プラスチックであるポリ乳酸に添加することで、透明なポリ乳酸/TOCN複合材料を調製した。表面改質TOCNはポリ乳酸中で完全ナノ分散していた。また、少量(1%以下)添加でポリ乳酸の材料物性の向上が確認でき、具体的には、わずか1%のTOCN添加で、ヤング率が40%、最大応力が26%、破断仕事が52%増加した。これは、セルロースナノファイバーが極めて優れた補強効果を持つことを示しており、ポリマーの高強度及び軽量化による輸送コスト削減が期待でき、利用展開が期待できる。今回確認された、セルロースのポリ乳酸中での良分散性及び効率的な補強効果は、TOCNの表面を選択的に改質することで初めて実現したものであり、極めて新規性のある手法であると言える。 このように、TOCNを補強材料として用いた複合材料は、極めて透明で、優れた強度、弾性率を示した。これら補強効果はこれまで報告されている補強材料と比べても優れたものであり、前述の優れた物性を有するTOCNならではのものであると言える。これら結果は、TOCNが優れた補強材料としての利用できることを示しており、再生産可能なセルロースの材料が大いに期待できるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、バイオマス由来材料であるTOCNを用いたナノ複合材料の調製に取り組んできた。現在、汎用高分子であるポリスチレン及び生分解性プラスチックであるポリ乳酸とのナノ複合化に成功している。得られたナノ複合材料の力学試験から、TOCNはこれまで報告されているセルロース材料よりも優れた補強効果を示すことが分かった。本手法はTOCNの表面化学改質を行うことによって、初めて実現した材料であり、高い新規性を有したものである。さらに、本表面化学改質はセルロース結晶の構造を損なわないものであり、これまで報告されているセルロースの表面化学改質と比較しても、非常に独自性に優れた手法であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は表面改質TOCN1ポリ乳酸複合材料中での、TOCNの結晶核材効果について検討する。一般的にポリ乳酸の課題の一つとして、結晶化速度が遅いという点が挙げられる。よって、幅~3nmかつ長さ>1μmのTOCNがポリ乳酸マトリックス中で示す核材効果について調べる。また、結晶化度と複合材料の強度との関係についても、上述の結果と合わせて実験し、環境調和性に優れた新規バイオ系複合材料の調製を行う。得られた複合材料に対しては、熱的、力学的および光学的性質について詳しく調べる。
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