2013 Fiscal Year Annual Research Report
TEMPO酸化セルロースナノファイバーの表面化学改質
Project/Area Number |
11J03027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤澤 秀次 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セルロース / TEMPO触媒酸化 / 複合材料 / ポリ乳酸 |
Research Abstract |
近年、最も地球上に多量に存在する植物資源(バイオマス)であるセルロースの材料利用が重要視されている中、セルロース系新規ポリマーナノコンポジットの調製を行った。ポリマーマトリックスとしては、ポリ乳酸(PLLA)を用いた。PLLAは生分解性プラスチックとして、石油由来プラスチックの代替として用途拡大が期待されているが、強度・耐熱性に課題がある。よって本研究では、セルロースナノフィブリルをポリ乳酸中でフィラーとして用いたバイオ系ポリマーナノコンポジットを調製し、上述の課題解決を行った。本手法により得られたポリマーナノコンポジットはこれまで報告されているセルロース/ポリ乳酸コンポジットよりも優れた強度を示した。フィルムの力学物性を引張試験により評価したところ、PEG-TOCN添加量に伴ってフィルムのヤング率・最大強度が増加した。ヤング率の増加傾向は、理論式であるHalpin-Tsai式、Voigt-Reuss式と極めてよく一致しており結晶性セルロースナノフィブリルの補強効果を最大限に発揮できたと言える。さらに、1wt%の添加で破断仕事が52%増加した。これは、これまで課題とされていた、セルロースナノフィブリルの分散性およびポリマーマトリックスとの相互作用を改善し、結晶性セルロースナノフィブリルの補強ポテンシャルを最大限に発揮できたためであると分かった。また、表面改質したセルロースナノフィブリルは優れた核剤効果を示すことが分かった。このように、本研究によってポリ乳酸の課題である強度と耐熱性を改善でき、ポリ乳酸の用途拡大が大いに期待できるといえる。これら結果は、循環型社会構築が叫ばれる現代において非常に大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
表面改質TOCNをナノフィラーとして用いることで、PLLAの課題である強度・耐熱性を効率的に改善できると言える。TOCNおよびPLLAはどちらもバイオ系材料であり、複合化を行うことで既存の石油系プラスチックの代替として利用が期待できる。これら結果は、セルロース系材料であるTOCNが優れた補強材料としての利用できることを示しており、循環型社会構築に大いに貢献できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、フィルム調製過程において溶媒キャスト法を用いたが、実用化においては溶媒を用いないプロセスが必要である。よって今後はTOCN表面に直接ポリマーマトリックスをグラフト化し、溶融によって成形することで溶媒を用いないプロセスの検討を行う。
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Research Products
(7 results)