2012 Fiscal Year Annual Research Report
代謝生化学とオミックスの融合による絶対独立栄養性水素細菌のグリシン代謝系の解明
Project/Area Number |
11J03030
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 洋子 筑波大学, 生命環境系, 助教
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Keywords | 独立栄養性細菌 / アミノ酸生合成 / 分子生物学 / 代謝生化学 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、絶対独立栄養性好熱性水素細菌Hydrogenobacter thermophilusのグリシン代謝系を明らかにすることで、新規な代謝経路・酵素を発見することである。申請者は前年度の研究で既知のセリン生合成酵素ホスホセリンホスファターゼ(PSP)を有さずセリン生合成が不明であったH. thermophilusから新規PSPを発見し、その結晶構造を解くことに成功した。本年度は、結晶構造から示唆されたPSP活性に重要な因子の重要性を確かめるため、以下の研究を行った。 PSPと基質の複合体の結晶構造からHis85およびC末端の数残基がPSP活性に重要であることが示唆された。そこでまずは基質と水素結合を作ることが示唆されたHis85をAlaに置換した変異タンパク質を作成したところ、本タンパク質は野生型のそれと比べて、基質親和性が著しく低下することがわかった。一方、活性中心の蓋になることが示唆されたC末端残基を削った変異タンパク質を作成したところ、最大活性(Vmax)が著しく低下することが明らかとなった。したがって、これら両因子がPSP活性に重要であることが明らかになった。さらに、これら両因子を保存しているCyanobacteriaやChloroflexiの有するH. thermophilusのPSP類似タンパク質も強いPSP活性を有することが判明し、これら因子がタンパク質遺伝子の中からPSPとして働いているものを正確に予測することができるようになり、それら生物のセリン生合成経路を予測可能となった。 さらに、本年度はセリン生合成経路の多様性及び進化の系譜を理解することを目的として、細菌のみならず真核生物においても新規PSPの探索を行った。既知の2種類のPSPを有さない赤痢アメーバEntamoeba histolyticaを用いてPSPを探索したが、現在のところ検出されていない。本生物はPSP以外の酵素を用いてセリンを生合成しているか、セリン生合成能を欠くものと推察される。
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Research Products
(5 results)