2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の形成現場における銀河の星形成活動の探査
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11J03067
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小山 佑世 国立天文台, 光赤外研究部, 特別研究員PD
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Keywords | 天文学 / 銀河 / 銀河団 / すばる望遠鏡 |
Research Abstract |
本年度は、まず研究代表者が昨年度から進めてきたすばる望遠鏡を用いた赤方偏移2.16の原始銀河団PKS1138領域における星形成銀河サーベイの結果について論文を執筆し、当初の計画どおり本年度中に出版することができた。本研究の重要な成果は、原始銀河団環境の星形成銀河は同時代の一般的な銀河種族に比べて(1)赤い色をもつ、(2)大きな星質量を獲得している、(3)高い星形成率をもつ、という傾向がはっきりと示されたことであり、これは現在の宇宙に見られる銀河団銀河の形成過程について重要な観測的事実を提供するものである。本研究結果を受け、研究代表者は星形成銀河の性質の環境依存性についてさらに詳細に調査する必要があると考え、昨年度以前の研究で構築した他の時代の星形成銀河サンプルも動員して、銀河の「星形成率一星質量関係」についてその時間進化と環境依存性についての研究も進めた。解析の結果、銀河の「星形成率一星質量関係」は赤方偏移とともに進化するが、ある一つの時代に注目すると、その関係は銀河団でもフィールドでも、有意な違いは見られないことが分かった。この結果は、銀河団での銀河進化のプロセスは非常に素早く作用し、星形成銀河はすぐに受動的銀河へと進化してしまうために、星形成銀河のみに着目した今回の議論では銀河の性質に大きな違いが見えなかったと解釈できると考えている。これは研究代表者のもつユニークな銀河サンプルで初めて実現した研究であり、結果について論文執筆を完了し、現在投稿中である。本年度はまた、2012年1月にGemini望遠鏡を用いて取得した赤方偏移0.4の銀河団銀河の面分光観測データの解析を進めた。面分光データの解析は複雑であり豊富な経験を要するため、本年度はほぼすべての期間を英国ダラム大学で過ごし、同大学のメンバーと協力してそのデータ整約を完了することができた。最後に、研究代表者が独自に注目する赤方偏移1.5の電波銀河4C65.22領域についても、すばる望遠鏡を用いたHα輝線撮像データの解析を完了した。最終年度は、これら二つのデータの論文化に向けて速やかに科学的議論へ進みたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、赤方偏移2.16の原始銀河団領域の星形成銀河サーベイの結果を論文として出版し、さらにその結果をもとに、長期滞在先である英国チームのメンバーとも協力して銀河の「星質量-星質量関係」について新しい着想で論文を執筆することができた。その他計画していたデータ解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに計画していたデータの基本的な解析は完了したが、最終年度はこれらのデータの論文化に向けて科学的な議論を進め、赤方偏移0.4の銀河団銀河についてのGemini望遠鏡による面分光観測の結果と、すばる望遠鏡による赤方偏移1.5の電波銀河領域の観測結果についてそれぞれ論文を執筆し、研究代表者が進めてきた多様な視点での遠方銀河団における銀河の星形成活動の探査の結果を発信していきたい。
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Research Products
(8 results)