2012 Fiscal Year Annual Research Report
中央構造線を例とした,大断層における剪断熱の定量評価
Project/Area Number |
11J03073
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 宏 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 剪断熱 / 中央構造線 / 炭室物 / ラマン分光分析 / ボーリングコア / 三波川帯 / 熱モデリング |
Research Abstract |
本研究では,日本陸上最大の断層である中央構造線(MTL)を研究対象として,MTL周辺の岩石に記録された熱履歴より,大断層における剪断熱を定量評価することを目指している.昨年度はMTL南の三波川帯において岩石サンプリングおよびそれらの炭質物ラマン分光分析による温度見積りを行い,MTL周辺での熱異常(断層面に近づくにつれての温度上昇)発生の有無の検証に取り組んだ.得られた最高到達温度構造はMTL付近での熱異常を示し,断層運動による剪断熱発生を強く支持する結果が得られた.また先行研究では,MTL北の領家帯において剪断熱発生を示唆する熱異常が報告されている.そこで本年度は,一次元の熱モデリングを行い,三波川帯および領家帯の熱異常データとのキャリブレーションを試みた.昨年度得られた三波川帯の熱異常データとのキャリブレーションでは,主要な剪断熱が長期間の横ずれ断層運動時に発生したことを示した.また炭質物ラマン分光分析結果と,熱モデリングから得られる剪断熱による被熱時間との比較より,同手法は一回の断層運動による瞬間的な温度上昇ではなく,長期間の断層運動の熱の累積により形成される温度上昇のみを検出可能であり,長期間活動を続ける大断層の剪断熱検出に適した手法であることを示した.さらに領家帯データとのキャリブレーションでも,長期間の横ずれ断層運動時に剪断熱が発生したことを示し,また大きな摩擦係数(μ>0.6)が必要であることを明らかにした.これらの結果は,MTLが横ずれ断層運動時に大きな剪断熱を発生した"強い"大断層であることを支持するとともに,摩擦係数を制約したことは,地震発生メカニズムや地殻強度推定にとって重要かつ大きな不確定パラメータとなっている断層強度の解明につながる大変意義ある成果といえる.以上のように,研究目的としていた大断層における剪断熱の定量評価は達成され,本年度も順調に研究を実施できた.
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Current Status of Research Progress |
Reason
最終年度
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度
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