Research Abstract |
今年度は,東北地方中央部の地殻構造についての理解を深めた.東北地方中央部に存在する稠密な定常観測網で観測された常時微動に地震波干渉法を適用し,レイリー波の抽出に成功した.抽出したレイリー波走時をデータとし,トモグラフィー手法によりレイリー波群速度の空間分布を推定した.周期数秒のレイリー波群速度は,地形の特徴と良い対応を示した,また,周期十数秒では,2008年岩手・宮城内陸地震震源の南西部において低速度領域がイメージングされた.同様の低速度領域は,実体波を用いた手法でも推定されており,内陸地震発生に寄与する地殻流体の存在を示唆している[Okada et al., 2010].本研究の結果は,別の手法で推定されている地殻構造をより確実なものとするとともに,従来の手法では推定が困難だった地殻浅部の地震波速度構造についての情報を付加した. また,今年度は,表層地盤構造の時間変化に関する研究を発展させた。東日本に存在するKiK-net観測点で観測された地震のコーダ波部分に相互相関解析を適用し,2011年東北地方太平洋沖地震に伴う5~10%程度のS波速度低下を検出した.強震動による歪の大きさと走時遅れに相関があることから,強震動によって表層地盤が損傷され,剛性率が低下した可能性が示された.また,同様の手法を用いて,表層地盤におけるS波偏向異方性の時間変化ついても調査した.その結果,2011年東北地方太平洋沖地震に伴う速いS波の振動方向の変化は殆ど観測されず,陸域浅部において,本震の断層すべりによる応力変化が偏向異方性に与える影響は小さいことが示された.広域で地震波速度と異方性の変化を調査した例は少なく,本研究は地殻構造の時間変化に関する重要な成果である。以上の成果は,日本地震学会,AGU Fall Meetingなどの国内外の学会で発表し,国際雑誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常時微動を用いた地殻構造の推定のための前段階となるレイリー波群速度構造の推定に成功した.また,研究の目的の一つである地殻構造の時間変化について,2011年東北地方太平洋沖地震を対象として一定の成果を挙げることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
推定されたレイリー波群速度構造を基に,三次元地震波速度構造を推定し,実体波を用いて推定された速度構造との比較を行う.2011年東北地方太平洋沖地震に伴う強震動や断層すべりによる応力変化は,地殻構造を変化させたと考えられる,今年度,KiK-netデータを用いて明らかにした表層地盤の地震波速度変化に加えて,常時微動や相似地震などの別のデータを用いて地殻構造の時間変化を調査し,地殻構造の時間変化についての全体像の把握を目指す.
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